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追跡!フロントランナー

信念と自らの行動力を信じて、各界で疾走する「フロントランナー」たちに迫ります。
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第十五回 「群言堂」デザイナー 松場登美(まつば・とみ)さん 〜石見銀山の「田舎暮らし」を商品にした〜

beフロントランナーロゴbeフロントランナー 2004年2月21日付け紙面から
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女性が田舎の豊かさに気づけば、世の中は変わる

―― 10年前、雑貨から群言堂(ぐんげんどう)ブランドの衣料へ。なぜですか?

松場

それまで主力だったカントリー調のエプロン、ランチョンマットなど「ブラハウス」ブランドの生活雑貨の将来に陰りが見えてきたからです。雑貨ブームも終わりに近づき、価格競争も激しくなってきました。単価の高い衣料を商売の中心に切り替える時期だと判断しました。そこで問題は、どんな服にするかでした。

私が欲しい服を

―― かわいい洋風雑貨から渋い和風の服へは大転換ですね

松場

私自身が40代になり、3人の娘も大きくなって、母親の手作り感覚のものをつくる時代は終わったと感じました。服をデザインするなら自分の着たいものにしたい。でも、都会の百貨店にも私が欲しい服は売っていない。遠回りのようですが、夫と一緒に近くの民家を買い取り、現代文明を排除した遊びの空間を設けました。この土地の昔の人たちのように、夜はろうそくのもとで酒を飲み、話し合ううちに、石見銀山の暮らしに根ざした服というイメージが固まってきたんです。

―― それを具体的なデザインにするのは難しそうですね

松場

私は服のデザインを専門に勉強したことがありません。世の中には優秀なデザイナーがたくさんいると思うと、怖くてやれないですね。流行や業界の常識にとらわれず、ここに暮らしている自分が感じる美意識を信じ、よそにない自然や歴史を背景にした素材で勝負するしかありません。

―― たとえば?

松場

自然というのは柿の葉っぱを見ても、一つとして同じものがない。私はその違いが好き。だから、布を企画するとき、織り方や糸、染めについて微妙に違うムラがある感じを出したいと思う。朽ちた土壁から、わらが見える様子もすごくきれいに感じる。そういうことも素材に生かしたいのです。近所に引っ越してきた彫刻家の方の家から古い染めの型が何百枚も出てきて、その柄をかなり復元してきました。

―― 生地はどこで作りますか

松場

新潟や静岡県・浜松などの産地に頼んでいます。廃棄されそうな古い機械で織ると、微妙な風合いが出るんです。いま、大量生産のための新型機械ならば、中国の方が上です。でも私は少量でも注文し続け、国内の古い機械や技術が消えないようにしたい。産地の倉庫で面白い布を探すこともあります。裏地の風合いが良ければ、それを表に使います。

―― そうだと、コスト高では

松場

生地の単価は安いものに比べて2倍以上。しかも、注文しても、結果的にアイデア倒れの失敗作になることがある。縫製も基本的に県内など国内の工場に頼んでいます。その割に、良心的な商品価格だと思っています。

―― 94年に「群言堂」の商品を初めて発表した時の手応えは?

松場

当時は雑貨店向けの卸売りが中心で、なかなか売れない。そこで、東京の生活雑貨の見本市に久しぶりに出品しました。夫のアイデアで、私たちの「ろうそくの家」の一部を展示場に再現したところ、それを見た横浜そごうの担当者が96年、和風雑貨のコーナーに置いてくれました。幸い売れ行きが良く、その後百貨店内の直営店が増えました。いまは直営12店。年商の6割が直営店、4割が専門店などへの卸売りです。

―― 「石見銀山」を売っているようにも見えます

松場

最初は商売の戦略として強調してきた面があるが、言い続けていると、自分の中の真実になった。いまは石見銀山で暮らすことが私のものづくりの一番重要な部分です。ものだけで売るなら、もっと安く、良いものがあると言われるでしょう。石見銀山を、自分たちの生き方を語るならば、もの以上のものが伝わると思う。それには、自分が語るだけの暮らしをここでしていないといけない。

古いけど新しい

――「復古創新」が持論ですね

松場

古いままの暮らしは退屈ですが、少し遊びを加えれば楽しい。古いけど新しい、懐かしいのに新鮮、日本的なのに国際的、田舎風なのにおしゃれ。江戸時代の武家屋敷の修復は、そんな狙いです。薪(まき)でご飯を炊き、近くの畑でとれた旬の野菜でもてなし、古い暮らしをいま楽しむ。ただ、県指定重要文化財ゆえの補助金がつく半面、くぎの1本まで復元せよ、と規制が厳しく、建物を活用しにくい。残りの改修は補助金を辞退してでも理想の空間にしたい。

―― 銀山は、07年に世界遺産に登録される方向だそうです

松場

あまり賛成できません。行政が観光振興に使おうと、景観に合わない看板を立てたり、公園に銀山の模型を作ったりする。大勢の観光客が押し寄せたら、せっかくの静かな田舎暮らしが失われるような気がします。地域の人たちとNPO法人を設け、行政に配慮を働きかけています。

夫は「主役以上」

―― 地域おこしのイベントにも力を入れていますね

松場

地元と都会の女性が語り合う「鄙(ひな)の雛(ひな)祭り」は一昨年まで10年間続けました。田舎の豊かさに気づかないこと自体が貧しいと思うからです。女性の意識が変われば世の中は変わります。東京のタウン誌編集者の森まゆみさんらをゲストに招き、地元の男性たちが裏方を務めてくれました。大森町の住民の集合写真を毎年撮って、カレンダーにすることも12年。最近は会社の仕事として続けています。

―― ご主人との役割分担は

松場

いまの仕事が成功しているとすれば、夫のプロデューサーとしての力。主役以上の力を持ち、それを見せない。何年つきあっても飽きない。向こうは飽きているかもしれませんが(笑い)。

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