―― 京都の職人の技術に注目したのはなぜですか
コピーライター時代、京都の名工30〜40人を取材する仕事がありました。もの作りの技術はすごいと思うと同時に、後継者不足に悩む姿も見た。デザイナーを志したとき、日本の技は海外にも通じるすばらしいものだと感じ、自然に地元の京都で織られた布を使おうと思いました。こつこつ積み上げてきた伝統の技術を後世に残すためにも、職人さんが生き生きともの作りを続けられるためにも、この人たちの技術を自分の服に生かそうと考えたんです。
―― 職人さんたちはすぐ協力してくれましたか
最初は「若いおねえちゃんが何言ってるの」という感じで、悔しい思いもしました。少量の注文では生地は売らないと言われたこともあります。まず、コピーライター時代に知り合った人の親類が耳を傾けて下さって、絞りの生地を提供し、販路として東京の恵比寿三越も紹介してくれました。着物の技術で、「若い人がかっこいいと思える服を作りたい」と熱心に話すと、一肌脱いでやろうという人も出てきました。
―― 初期は、アンティーク着物の布を使っていましたが、現在はオリジナルの布です
好きな柄でも、アンティーク着物地だと、使いきったら終わり。手入れにも手間がかかります。「和ブーム」が始まった02年ごろ、和柄をカジュアルな服に採り入れるニーズがあると感じ、ストレッチ素材が好まれると考えました。丹後の染織の職人さんと出会っていたこともあって、新しい布に和柄をプリントした素材を使うことにしました。今は、私のイメージ通りの織りや染めができるようになっています。
―― なぜ東京へ?
京都は本物がある街ですが、出る杭(くい)は打たれるというか、伝統を守る土地柄ゆえに、新しいものに対するアレルギーがある。ここ10年で変化したとは感じますが……。東京へ、そして海外へ進出したいという気持ちが強かった。
―― 和柄の魅力は?
和柄には目に見えへん力があって、柄の一つひとつに意味があります。例えば、菊は不老長寿を願う柄とされています。柄にメッセージがあるから、生き残ってきたのでしょう。復刻柄だけでなく、ここ2〜3年は、オリジナルの柄にも挑戦しています。
―― 服で人生を変えられる?
有名なフラワーアレンジメントの先生につくため、つてもなく英国に渡った人が、ロンドンで私の服を着て歩いていたら、「この柄は何?」と声をかけられ、なんとそれがその先生で、奇跡的に入門できたそうです。私の服が何かのきっかけになったという話を聞くと本当にうれしい。
―― どんな女性を想定してデザインしていますか
人生を思い切り楽しんでいる女性です。だから、コーディネートしやすく、洗えばすぐ乾き、しわにならない素材を選んでいます。扱いやすいシルクも開発しました。
―― 初のショーはロンドン?
友達が「あなたの服は英国で受けそう」と言ったのを真に受け、あてもないのに作品をトランクに詰めて出かけました。ある広告会社を訪ねると、3日後の新人発掘のショーに出してみたらと言ってくれる人がいた。でもそれは帰国する日。ディスカウントチケットなので、便を変えられへん。運よく、友達が日本から来たのでバトンタッチ。だからショーは写真で見ただけです。でも海外での実績があったことでチャンスの扉が開き、98年、東京・渋谷で展示会を開くことができました。「東京コレクション」から参加の誘いも舞い込み、99年、絞りの生地や京都府織物・機械金属振興センターが開発した素材を使って、東京・青山でショーを開きました。700人もお客さまが来てくれました。
―― 順風満帆の出発です
京都の銀行が協力してくれ、融資も下りて、会社設立の資金的な苦労はありませんでした。でも甘かったですね。経営は素人なのに、何もかも背負いこんじゃう性格ですから。寝ずに仕事をし、疲れ果てて地下鉄で乗り過ごしたことがありました。一つ先の駅のホームに私の服を着た見知らぬ人がいたんです。奮起しました。偶然じゃなく、がんばれと言われていると感じました。
―― 社員は女性ばかりです
感性を分かりあえるのはやはり女性。お客さまは女性ですし。私の服のファンで入社した人がほとんどです。
―― 海外への進出は?
ニューヨークで展示会をしたり、フランスや米国で開かれたアップル社の商品展示会にiPodのケースと組みひも付きのイヤホンを出品したりしています。これまでに種をまいた、いくつかの点を線にしていくのが目標。服を媒体に、もの作りに携わる人たちと出会い、感性を大切にする社会にしていくネットワークを作りたい。
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