日本人の男性は、国際舞台に出ると押し出しが弱く、存在感に乏しいと言われる。しかし、この人みたいな例外もいる。
さほど長身ではないが、堂々とした立ち居振る舞いで大きく見える。人なつこい笑顔で、たちまち周囲を魅了してしまう。カーデザイナー「ケン・オクヤマ」として、日本より欧米の方で有名かもしれない。
アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)、ドイツのポルシェで経験を積み、さらにイタリアの名門デザイン工房・ピニンファリーナに移って、フェラーリやマセラティなど、車好きなら誰でも知っている高級スポーツカーのデザインを手がけた。
そして今年9月、ピニンファリーナのデザイン部門責任者の職を辞し、独立した。伊トリノ、米カリフォルニア、日本の3カ所を拠点にする。日本での活動の重点は、自らのデザインを伝統的な地場産業で製品化し、世界に売り出すことだ。
晩秋の福井県鯖江市。来春販売予定の「ケン・オクヤマ」ブランドのメガネの製作打ち合わせで、試作品を手にメーカーの担当者を質問攻めにする。
「これくらいフレーム細くして大丈夫ですか?」「もう少しカーブをかけて……加工のとき問題ないですか?」
徹底的に細部にこだわって、製品のラインを凝視する。
その数日後、今度は故郷の山形県入り。3年前から「山形カロッツェリア研究会」の代表を務める。地元の家具製品などにデザイン、プロデュース面で協力し、パリの国際見本市へ出品するなどの活動を展開する。沈滞が続く地域産業に、新たな息吹を与えようと奔走する。
天童市の家具メーカー。デザインしたオブジェ風ハンガーは、独特のカーブを描く。中にはスパイラル状のものもある。木製品でもこの曲がりを実現できるのが、山形の家具業界の職人技だという。
「形をシンプルにして、さらにシンプルにして、そこにカーブでアクセントをつける。暮らしの中でそんなデザインを楽しんでほしい」
メーカー関係者は「奥山さんに納得してもらうのは大変です」と言いながら楽しそうだ。
物心ついたころから、いつも鉛筆を握りしめ、車を描くことに夢中だった。小学生の時、大阪万博のイタリア館で見たコンセプトカー「フェラーリ・モデューロ」の斬新な形状に、体中がしびれる思いをした。そして「スーパーカー」ブームを体験した10代。
「あんな車を作れたら」。少年のころ抱いた夢を実現した今も、土曜日の早朝や、妻子が寝静まった深夜、パジャマ姿でひとりデザイン画を描くことに集中する。
家具、ショールーム、テーマパーク、ロボット……。視線の先には「未来の暮らしをデザインする」という目標がある。
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