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追跡!フロントランナー

信念と自らの行動力を信じて、各界で疾走する「フロントランナー」たちに迫ります。
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第二十一回 工業デザイナー 奥山清行(おくやま・きよゆき)さん 〜未来の暮らし、世界に向けてデザイン〜

beフロントランナーロゴbeフロントランナー 2006年12月9日付け紙面から
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10年後の顧客を想像

――なぜ独立したのですか

奥山

50代になる前に活動の領域を広げたいという気持ちがありました。カーデザインはもちろん、家具、インテリアや都市計画などを広く手がけたい。鉄道のような公共交通機関にも関心があります。

――日本・イタリア・アメリカと3カ所拠点を持つ理由は。

奥山

僕の場合、国によってクライアントの性格が分かれていて、イタリアは自動車、日本は家具などの工業デザイン、アメリカはテーマパークや映画セットなどのエンターテインメント系が多い。部下のデザイナーたちにはそれぞれクライアントの近くにいてもらい、メールで連絡を取りながら、要所で現地に行って打ち合わせます。

売れてこそ

――自信のほどは

奥山

商業的成功があってこそのデザインで、「奥山に頼めば売れる」と証明したい。デザインを提供するだけでなく、販売戦略まで含めた商品開発の全体をリードするプロデューサー的な、いわば「船頭」役を目指します。ファッションの世界では、三宅一生さんや高田賢三さんのように、デザイナーがそういう仕事をして世界市場で成功していますね。工業製品を作るにはどうしても大きな組織が必要だから企業が前面に出てきましたが、これからは消費者も作り手の顔が見える製品に信頼感を求めると思います。

――出身地の山形をはじめ、地場産業を重視していますね

奥山

日本各地の職人さんたちの能力は世界的に見て非常に高い。だからイタリアの「カロッツェリア」(工房)のような、職人の技術と知恵を生かした高品質のもの作りを日本でも実現出来るはずだという発想です。4年前に山形県庁の工業振興部門の担当者や友人たちとその話で意気投合し、具体化してきました。鯖江のメガネは、僕のカーデザインの仕事を評価してくれたメーカーの依頼です。

――職人気質の強いイタリアで成功した理由は

奥山

ピニンファリーナに移る前、僕はGMでデザインを審査する側にいたわけです。ポルシェや派遣された日本のメーカーを含めて、30代までに車のモデルを作った経験は恐らく世界で一番豊富だと思う。最初はイタリア語も分かりませんでしたが、同僚のデザイナーに負けるはずはないという自信はありました。リスクも含めてそこまで計算して転身しましたから。

――その後、ピニンファリーナのデザインディレクターに

奥山

自己主張の強いデザイナーたちを束ねて仕事をさせる、いわば猛獣使いみたいな立場です。最後に決めるのはリーダーである自分と徹底して強調しておかないと、あとで混乱する。一方で、いかに売り上げを伸ばすか、どこのコストを削減できるか、どの国で新しいクライアントを獲得できるかなど経営面に責任を持つ。そんな毎日は非常にやりがいがありましたが、疲れて家に帰るとお茶漬けが食べたくなって、やはり自分は日本人だなあと思いました。

シンプルに

――海外で長く働いて日本人の長所短所をどう見ますか

奥山

長所は「切り捨てる」能力にたけていること。茶の湯や禅や、日本建築もそうですが、シンプルさの中に奥深さを生む文化をもたらした。情報があふれてどんどん複雑になる世の中で、この能力は価値を増すと思います。短所はコミュニケーション能力。最初にしっかり相手の目を見て握手をする。相手の意見をきちんと聞いたうえで自分の意見を伝える。これがすごく下手。小学生から英語を教えて解決する問題じゃない。

――クリエーティブな仕事にあこがれる若者は多いですね。

奥山

10代に教わることの90%は、恐らく一生使うことがない知識です。でも、自分に本当に必要な残りの10%は何か、誰にも予測できない。好きなことは時間をかけて探すことです。僕も子どものころから車は大好きでしたが、一直線にカーデザイナーを目指したわけではない。スポーツにも熱中したし、大学では広告デザインが専攻で、普通の遊び好きの学生だった。卒業してアメリカに渡った時も明確な目的はなかった。あちこち見て歩くうちに、自分が本当にやりたいのは車のデザインだと分かり、あとはもう、迷いはなかったですね。

――デザイナーに最も必要なのは何でしょう

奥山

手を動かしてたくさん描き続けること。手の動きは、頭で完全にはコントロール出来ない。たくさん描いているうちに、偶然思いがけない線が描けて、そこから新たなデザインに発展してゆくことがあります。

――デザイナーの仕事のだいご味とは

奥山

子どもの頃に夢見た未来を、形にして見せることでしょう。デザインは、なぜ、誰のために作るのかを常に意識しなければいけない。買ってくれる顧客の気持ちに乗り移るくらいに。そして、今は存在しない未来の顧客、例えば10年後の顧客を想像しないと、新しいものを創造することは出来ない。そこが面白いところですね。

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