にぎやかで、元気な「村」がある。三重県伊賀市の郊外。「伊賀の里モクモク手づくりファーム」だ。
山の緑の中に点在する赤い屋根は、ハム、ウインナ、地ビール、パンなどの手作り工房と三つの飲食店。自前の田畑や果樹園、牧場計約100ヘクタールと、周辺の養豚家や百軒の契約農家で作る、安心な食材だけを使う。
週末には、親子連れが農場や工房で、ものづくりを体験し、新鮮な野菜や料理に舌鼓を打つ。年間50万人が来場する。
「農業には夢もロマンもある。楽しいぜぇ」。「村」を率いる木村修社長(55)と吉田修専務(56)は、笑う。
三重県経済連の職員だった2人は、1987年から翌年にかけて相次いで「脱サラ」。伊賀地方の養豚家18人と農事組合法人「伊賀銘柄豚振興組合」を設立し、小さなログハウスで「手づくりハム工房モクモク」を始めた。今のファームの前身だ。
経済連時代の83年、流通担当として豚を扱っていた木村さんと、獣医として養豚などの指導をしていた吉田さんは、養豚家3人と「伊賀山麓(さんろく)豚」を開発した、抗生物質の量を抑え、木酢酸を与えて臭みをなくしたこの豚肉の付加価値をさらに高めようと加工業に乗り出したのだ。
約1年は低迷したものの、手作りウインナ教室が大当たり。快進撃が始まった。2人は農業の衰退の流れに逆らい、夢を語って周囲の農家を巻き込んだ。
農薬や化学肥料を抑えた野菜や特別栽培米づくりを呼びかけ、できたものはモクモクで売るなど、地域全体で「メシが食える農業」の仕組みを次々と生みだし、95年オープンのファームで実演した。
「村」にはいま、農業に燃える若者たちが集まってくる。平均年齢28歳。最近は官公庁や大手企業からの転職組も多い。「トップ2人との距離が近い」と彼らは声をそろえる。
とにかく従業員によく声をかけ、よく笑う木村・吉田コンビは、自称「天使と悪魔」だ。
「ヨるまで働け、シんでも働け、ダまって働けの吉田。キらくにやれ、ムりすんな、ラくにせいの木村。従業員の漫才ネタですけど、ぴったり」。役員総合企画室チーフの松田明子さん(28)はそう言って笑う。
そんな絶妙コンビは毎日のように全国を飛び回る。農業関連施設の相談に乗り、農業公園の計画作りを手伝う。
田園型政令市を目指す新潟市からも要請され、農業活性化の事業計画に参画する。レストランや売店を備え、主力農産物などの魅力を知ってもらう「食と花のにいがた交流センター(仮称)」などを建設予定だ。篠田昭市長(58)は「食べられる農業を農家にも市民にも実感してもらいたい」と期待する。
農業を元気にする――2人の「野望」の種は、各地で芽吹こうとしている。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。