――昨年の年商は
ファームで15億円、名古屋などのレストラン5軒で10億円。通信販売と百貨店での売り上げが10億円。合わせて35億円になった。
でも、利益は目的じゃない。事業と運動の両立が理想だから。組織が永続するための手段としては必要やけど。
――運動、ですか
農業を、夢のある未来的産業にすること。
農業とは何か、食べものを作るとはどんなことかを知ってもらって、農や食と人とを結び直しながらね。
――きっかけは豚でしたね
輸入豚に対抗して、政府が国産豚肉の消費拡大運動をしてたけど、表示がなくて、どれが国産かわからへん。一目でわかる銘柄豚を作ろうと。
経済連では、牛や豚の飼育指導の吉田は作る側、流通担当の僕は売る側。伊賀豚では、消費者の要望を実現したけど、それまでの僕らは、流通の要望通りに常に早く効率よく、薬を使って脂を固めて……食べたいものを作ってなかった。
――出会いもその時
勉強会に流通のバイヤーを呼んできたのが木村。同期だけど、僕は中途採用で新人研修がなくて、初対面やった。
――なぜ独立を?
伊賀豚が当たって、加工でもっと付加価値を高めよう、っていう話になって。
誰もいないから「おれがやるわ」と経済連を辞めた。栄養士のかみさんは「借金さえ持ってこんだらええ」。人生は一回やし冒険しよか、と。
88年5月に創業したけど、3カ月で3千万円の赤字。家族が路頭に迷うのは困るけど、先に辞めた木村を見殺しにできない。だめなら2人で動物病院をしようと9月に辞めたけど、かあちゃんは、一カ月口きいてくれなかった。
――軌道に乗るまでは?
地元で売れず、物産展を回った。ある日、地元幼稚園の父母からハム作りを教えてと電話があった。ウインナの方が作りやすいと、ウインナ教室を始めたら、話題になって人が来始めた。商品も売れた。
――ファームの完成は95年
したいことが増えて、いろいろ作れる大きい工房を設計したけど、人が主役の小さい工房をいっぱい建てて、自然の中にちりばめたほうが、うちらしいと、「工房公園」にした。
――その後、通販を始めた
当時問題になった米産輸入米に対して、「日本こそ米の国」というメッセージを込めた米入りウインナを作った。すると、東京の百貨店が名前を変えろと言う。それなら自分で売ると、県外の店から一斉に引き上げて、会員制通販を始めた。
――食育に熱心ですね
昨年、8億円かけてコテージ村「OKAERiビレッジ」とジャージー牛の牧場をオープン。スタッフ5人が多彩なプログラムを用意している。
ビジネスなら、その8億円でレストランを増やす方がいい。でもうちの基本は事業と運動のミックスや。従業員も、金に関係ないことをする方が、モチベーションが上がるし、いい従業員も集まる。
小さいころから食べ物について学ぶと、身近なところで生産されるものを誇りに思うようになる。すると、作る人が誇れるようになる。郷土愛が育ち、食料の自給率も上がる。
――宿泊部門は苦戦した
単なるホテルになってはあかんから、楽天にもJTBにも出さない。家族に来てほしいから、チャージ料は1泊1棟2万円。でも、今夏は5200人くらい泊まってくれた。
――それにしても仲がいい
かあちゃんより木村といる方が長いし、ようしゃべるからな。僕らは、給料も条件も一緒。木村はコミュニケーションの取り方がうまくて、敵作らへんから社長。僕は好きなこと言って敵作るから専務(笑)。
吉田が事業組み立てて、僕は外交担当。
――来年は忙しくなるとか
津と大阪にレストランを出店。年間1万2千頭生産できる養豚場も作る。県内の複数の地域おこしプランの担い手としても手を挙げている。養豚場には、県内の学校給食の食べ残し、コンビニなどの廃棄物を回収して、液体状の飼料と肥料をつくるプラントも作り、えさの2〜3割をこれでまかなう。
3月、主に団塊の世代が農のあるくらしを楽しむための農学舎がオープンする。借り上げた遊休地を年間15万円で貸して、農業指導もする。実はこれ、遊休地の利用方法として注目されている。この手法が確立されたら地域の事業にできる。
――モクモクらしさとして指摘され、最もうれしいのは
あったかいね、やな。
言われてうれしいのは、「モクモクがあってよかった」かな。安心安全なものは、愛がなければ作れない。愛をこめて作ったものに、愛を感じたら、人は愛で返してくれる。お客さんとは、そういう関係が築けていると思うよ。
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