東京・渋谷の巨大ターミナルを見下ろすようにそびえるセルリアンタワー東急ホテル。外国人の宿泊客が、ロビー階の外に広がる庭園を眺めている。
長大な石が、押し寄せる波のような曲線を描く。周囲の緑と静けさ。慌ただしい雑踏の街に、不思議な安らぎの景色が浮かび上がる。
「仕事に追われ、時間に追われて見失いがちな、本来の自分を見つめる空間に……」とデザインに込めた意味を語る。
赤坂御用地に近い青山通り沿いのカナダ大使館庭園。市松模様に敷かれた石畳は、繊細さの中に鋭い美をかもし出す。新潟県長岡市の県立近代美術館は建物が半ば地中にある。屋上庭園から近くを流れる信濃川まで、境界を設けずに一体にとらえたデザイン展開だ。
現代の都市空間に、枯山水を生かす。そのデザインの根本は、禅の教えと分かちがたく結びついている。
横浜市鶴見区の住宅街にある曹洞宗建功寺。16世紀から続くこの寺の長男に生まれ、いま18代目住職。もう一つの顔だ。
日曜日、早暁の本堂に読経の声が響き、近隣の住民約30人が参加する坐禅(ざぜん)の会が始まる。時折、警策(きょうさく)が肩を打つ「パシッ」という音が冷気を裂く。
この日の説教は「喝(かつ)」という言葉の意味と迫力について。
「妄想に陥ったとき、目覚めるため自分自身に、カァーツ!と言い聞かせてみましょう」
大みそかの夜は山内をろうそく3千本が照らす「万燈除夜の鐘」の催しが恒例。元日は本堂を開放してサックスや尺八、フルートなどによる奉納コンサートを開いてきた。
「日本の仏教は葬式仏教なんて言われるのは残念です。迷う人が多い今の社会こそ、仏さまの教えが必要です。若い人も寺に関心を持つような活動を積極的にしたい」
古い教えや型を尊重しながらも教条にとらわれず、現代に生かそうとする。その感覚は庭園のデザインに通ずる。
少年時代に家族旅行で訪れた京都で、伝統的な庭園美に魅せられた。大学卒業後、僧侶としての雲水修行を行い、その後庭園デザイナーの仕事も始めた。
海外の日本庭園の仕事も手がける。カナダ、ドイツ、ノルウェー、イギリス、ラトビア――講演依頼も多い。作務衣(さむえ)姿で世界を飛び回り、さながら「和の美」の伝道師だ。欧米の空港で、見知らぬ人から禅について問われることもあり、関心の高まりを肌で感じている。9年前から多摩美術大教授も務める。
「京の名庭は美しい。でも、それをただ現代の都市空間の中にコピー・アンド・ペーストしてもダメなんです」
そうつぶやきながら、新たなデザインの構想を練る。いずれ、自らの手で龍安寺のような石庭を作り上げたい。それにはまだまだ修行が必要、という。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。