――育児サービスからプロスポーツへ。大胆な転進ですね
私の中では、子育て支援とスポーツはつながっています。思春期を迎えた自分の子を見ていて、スポーツはすごく必要だと感じていました。そういう意味では子育て支援の延長上、という感じです。
――それにしても、我が手で大きくした育児サービス会社のコティを手放すのは惜しくなかったのですか
コティは、運営する保育室が全国に約70カ所と、拠点数で日本一になりました。最初は札幌の事務室の一角で、自分で給食を作ったり送迎をしたりと、手こぎボートを操っているような感覚でしたが、やがてモーターボートからクルーザーになり、乗組員も乗客も増えて客船のようになってしまったんですね。そうなると、自分でかじを切って航海している手応えがなくなってきて。客船が得意な船長にお任せした方が、乗組員もお客様も安心かなと。
――それで、サッカーへ?
もう一つ感じていたのは、本州に比べて北海道だけが取り残されたように、人も町も元気がなくなっていることです。客船を降りたら、次は北海道の中で北海道を元気にする事業ができたらいいなと漠然と考えているところへ、コンサドーレ札幌からお話がありました。
――そして、今度はバスケットボールに
コンサドーレは役員が児童買春容疑で逮捕されたり、J2での戦績も低迷してJ1昇格が遠のいていたりと、情けない状況でした。そんな中で、メーンのスポンサーが突然撤退してしまったんです。その1週間後に私が、それに代わるスポンサーを引っ張ってきたことが、スポーツ界の一部で話題になったようです。東京の企業家から、自分が出資しているバスケットボール男子スーパーリーグに所属する福岡のチームが経営難なので、何とかできないかと相談がありました。
――経営再建を、と?
そのチームは結局、リーグを脱退してしまいました。でも、その間に知り合ったJBL(日本バスケットボールリーグ機構)の方から、リーグがプロ化するので、北海道からエントリーしてみませんか、と声をかけてもらったんです。もちろん正式参戦できるかどうかは、別の話でしたけど。
――バスケットチームを育てるのは初めての経験ですね
保育という、ふつうにやれば利益の上がりにくい仕事をやってきたので、自信はあったんです。自分なりに調べてみると、北海道は競技登録者だけで4万人と競技人口が多いこと、バスケットは体育の授業で誰もが1度はゴールに向かってシュートを経験していること、体育館が一つあれば試合を開催できるし、シーズンも野球やサッカーと重ならないことがわかりました。
――それで確信をもった
コストはコンサドーレの5分の1で済み、上手にやれば売り上げは3分の1くらいになるとわかったので、お断りする理由がなくなったんです。仕事を通して北海道を元気にしたいという私の希望にとってはいい素材で、新しい自分への挑戦にもなると感じました。
――分析や決断は1人で?
自分でやらないと納得できないので。私ってそういうとき、すごく集中力があるんですよ。車を運転していても、カーブミラーがバスケットのゴールに見えてしまうくらい。誰かに相談して反対されても、その忠告をいったんは受け止めて、本当にできないのかなと自問自答します。そして、できない可能性を塗りつぶしていく自分がいるんです。
――用意周到、ですね。
いえ、始めるときはマーケットリサーチをがっちりするのですが、その段階で事業をこんなふうに展開しようとはあまり考えないですね。最初は小さく。小さくやっているうちは失敗も小さくて済むので、小さく修正していって、感じるものがあったところを広げていく。コティも、最初から広げていたらたぶん失敗して、ぺちゃんこになっていたと思います。
――北海道のバスケットボールも大きく育てたいと?
私の役目は、発足から6年間だけと考えているんです。会社を立ち上げてから1年たちますから、あと5年です。そのころには、そのころのチームにふさわしい人が引き受けてくれるはずです。
――すると、そこでまた新たな転進ですか
50歳になったら家庭に戻ると、コティのころから考えていました。子どもは、生まれた瞬間に私を離れて独り歩きを始めます。起業もそれと同じと思います。
――では、何を?
昼間からお鍋をコトコト煮ているような、そんな生活でしょうか。
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