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第16回 任天堂代表取締役専務 宮本茂(みやもと・しげる)さん - ゲームを生活の「道具」に

beロゴ2009年4月11日付紙面から
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「Wii Music」でギターをかき鳴らす。画面の分身、アバターは即興で作った=京都市南区の本社

かれこれ30年、新しい遊びを開拓し続けてきた。

世界中で4千万本を売り上げた85年の「スーパーマリオブラザーズ」は、テレビゲームの文法を作ったと言われた。98年の「ゼルダの伝説 時のオカリナ」では生命感あふれる仮想空間を作り出し、絶賛された。

「別のゲームに似ていると言われるのが一番嫌。新作を発表するたびに、今度こそ失敗するぞ、失敗するぞ、と言われている間が一番わくわくします」

そんなマエストロはいま、「ゲーム人口の拡大」を掲げる任天堂のソフト開発の最高責任者として、遊びをより日常生活に溶け込ませようとしている。

最新ゲーム機「Wii」を大ヒットに導いた「Wii Sports」は遊び手をテレビの前で「運動」させた。続く「Wii Fit」では「健康」をテーマに体重計測までも遊びにしてしまった。そして最新作「Wii Music」は「音楽演奏」を万人の身近な楽しみにしようともくろんだ。

ゲームのノウハウを使って楽器へのコンプレックスを取り除くソフトができないか――。3年前、開発陣をけしかけたコンセプトは自身の体験から長年温めていたものだった。大学時代にフォークの虜(とりこ)になって以来、ギターの練習を続けてきた。

「でも、うまくならない。ずっと素人のままだから、いつまでたっても人と演奏するのに気後れしてしまう。楽器をプロみたいに弾けたら、という欲求は多くの人にあると思うんです」

「Music」はWiiのリモコンを60種類以上の楽器に変えてしまうソフトだ。簡単な操作で、楽曲を自在に操ることができる。「ゲームとも楽器ともつかない」と言う通り、誰かと競いあう得点もなければ、明確なゴールもない。遊び手が熱中するほどに、画面を見ることさえしなくなる。まるでカラオケで歌うように。

「幼いころってみな楽器の音が鳴るだけで楽しい。音を楽しむって、その気持ちをいつまで持ち続けるかだと思うんです。そんな僕の思いを開発スタッフが形にしてくれただけ」

とはいえ専務・情報開発本部長として全ソフトを監修する立場だ。要所要所のさじ加減は施した。音楽ゲームにつきものの譜面を出さないようにしたり、リモコン操作に楽器特有の動きを加えたり。「楽器に興味のない人が違和感を覚える部分は、なるべくなくしていかないと」

もくろみ通りか、新しい楽器遊びは現実を変えつつある。年頭、全米最大の音楽教育団体が教材として「Music」の採用を決めた。「楽器演奏をしたことがない人の8割は演奏しておけば良かったと思っている。そんな人に前向きなきっかけを与えられる」との評価からだ。

マエストロがずっと抱いているゲームの理想形がある。

「普通の人が道具のように使える『おもちゃ』を作りたい。手になじんだ道具って、ずっと触っていたくなるでしょう。折にふれて取り出して使って、長いこと古びない。そんな遊びを一つでも多く残したい」

そう、任天堂が作り続けている花札や百人一首のように。

プロフィール

宮本茂さん

京都府生まれ。金沢美術工芸大卒。77年、任天堂入社。「スーパーマリオブラザーズ」でテレビゲーム時代をリード。02年から現職。04年に就任した岩田聡社長の方針で、専務としての統括業務より情報開発本部長の業務が優先されている。06年、仏レジオン・ドヌール勲章、08年には米タイム誌読者投票で「世界で最も影響力のある著名人」の1位に。

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