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第16回 任天堂代表取締役専務 宮本茂(みやもと・しげる)さん - ゲームを生活の「道具」に

beロゴ2009年4月11日付紙面から
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東京は追わない

――師匠である横井軍平さん(元任天堂開発部長、DSの前身「ゲームボーイ」の生みの親)が亡くなった年齢になりました。

いつの間にかそうなってたんやね。確かに3年くらい前から急激に社内で自分の後が育っているか、考えるようになりました。最近、入社2〜10年目の人と月2回、おやつを持ち寄って話をするクラブ活動を始めたんですよ。とにかく若い人が聞きたいことに答えていく場です。

――何を話すんですか。

ゲーム作りの考え方の原理や、難題にぶつかった際の解決方法といった自分の体験ですね。そうしたノウハウは古びない。あと妙に力入っている人が多いから、まず自分を見つめる視点が大事と言い続けています。

――任天堂は不況下でも絶好調です。何が強みなのでしょう。

ずっと京都で仕事をしているせいか、よく「東京ローカル」という言い方をします。東京のはやりを追っている限り世界で通用せえへんよ、と。世間の反応って簡単に反転するから、とにかく周りにないものを作るのが大事。何年か後に評価されて残るかもしれない。  「Music」でびっくりしたのは、遊び手が画面を見ないこと。ゲームの決まり事を一つ崩した気分になりました。娯楽産業ですから何を出してもリスクはある。追いかけがいがあるリスクかどうか、そんな見極めの打率は上げたいなあ、と常日頃思っています。

コラム - チェックポイント

「宮本後」を真剣に考えて

「生活力の人」

コピーライターの糸井重里さんは宮本さんに対し、そんなキャッチコピーをつける。伝説のゲーム「MOTHER」(89年)の開発で知り合って以来のつきあいだ。

「普通の生活者としての完成度が高い。町内会やPTA、親類づきあいといった、クリエーティブな仕事をしている人なら避けて通りたい仕事を、あれほどまめにやっている人はいません。たまに会うときもスケジュール調整がたいへんなんです」

ある分野を突き詰めていくほどに精神や肉体や行動様式は常人とは異なっていくものだという。そんな人は常人に対して「これくらいはわかるだろう」で済ませてしまいがちだ。ところが糸井さんは、宮本さんが「わからないですよね」と粘る姿を何度も見てきた。そもそも「MOTHER」の企画書を最初に見せたときも、そうだったらしい。

「普通の人だから、日常生活から面白さを発見するのがうまい。だから体重を量るゲーム「Fit」も生まれた。たぶん「Music」も音楽理論が確立する前の「原初の楽器」を目指したんじゃないかな。人間の普遍性がどこにあるかを今日も明日も探しているような人だから、世界に通じるものを作れるんです」

糸井さんが心配しているのは、ただ一つ。「後継者問題ですね。『宮本後』の任天堂を真剣に考えた方がいい。ゲームを作るときくらいに」

(野波健祐)

(更新日:2009年11月17日)

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