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beロゴ2009年7月25日付紙面から
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猛暑の中、店長自ら先頭に立ち、誰よりも大きな声で学生たちに呼びかけた=東京都豊島区の立教大学前

初夏の強い日差しを浴び、ネクタイをした襟元に汗が光る。

「大学生協でーす。ただいま運転免許取得、海外旅行、就職講座のご案内をしています」

朝8時から同僚5人と東京都内の有名私立大学の正門前に立ち、学生たちに案内冊子を配った。5時間が過ぎ、汗が頬(ほお)をつたっても笑顔を絶やさない。

「あ、白石さんですよね? がんばってください」

そんな声援も浴びた。

そう、この人が、あの「生協の白石さん」である。

早大、東京農工大の大学生協勤務を経て、昨年11月に東京インターカレッジコープ渋谷店の店長に抜擢(ばってき)された。インカレは大学生協のない大学の学生や教職員が加入する生協。店での販売業務よりも、大学生協を知らない学生たちにPRして組合員を増やす活動が主体だ。

農工大の店舗で販売担当だったころ、学生が店へ意見や要望を記す「ひとことカード」にまじめながら笑えるユニークな回答を書き、店に掲示してきた。

学生 しゃけとば、おいてください。

白石 「鮭とば」、ご存じではない方も多いかと思われます。鮭を縦に細切りし、皮付きのまま塩や味を加え、乾燥させたもの。いわばビーフジャーキーの鮭版。酒好きな方の晩酌のお伴(とも)に最適です。さて、そんな鮭とばですが、置けません。

要望に沿えないとき、どう答えれば気持ちよく納得してもらえるか。そこに心を砕き、どんな質問も無視せずに答えた。

学生 愛は売っていないのですか…?

白石 どうやら、愛は非売品のようです。もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠(わな)かと思われます。くれぐれもご注意ください。

こうした問答をまとめた「生協の白石さん」(講談社)が世に出たのは05年11月。勝ち組・負け組の二極化が進むなか、IT企業社長が「人の心は金で買える」とうそぶき、ファンドを運用する元官僚が「金もうけ、悪いことですか」と不敵な笑みを浮かべる時代だった。

地道な姿勢が共感を集め、93万部のベストセラーになった。農工大からは感謝状が贈られ、広報大使にも任命された。

学生にとって、わがままな質問も受け止めてくれる「親」のような存在。そんな「白石さん」は幼いころ、両親が別居・離婚し、ときには電気や水道が止められるような暮らしだった。天井に懐中電灯をつるす夜もあった。女手一つで育てた母は「放っておいたら勝手に育ってくれました」と笑う。

本人は自分の性格を「無駄に陽気」と表現する。「激務でも笑顔で余裕を見せるって大事です」。冊子を配布したときの笑顔は「営業スマイル」だったのか。「暑くって、途中からは必死で笑顔を作ってました」

全国に218ある大学生協は岐路に立たされている。私学の中で生協のある大学は17%にすぎない。普及率93%で長く「聖域」だった国立大学にも、04年の法人化以降、コンビニやコーヒーショップなどが続々と出店し、生協と競合している。

東京インカレ(組合員約2万5千人)の08年度の売上高は約4億2千万円。この10年で40%減だ。それでも笑顔で言う。

「生協には、学生のニーズに応えてきた歴史と信用があります。これからですよ」

プロフィール

白石昌則(しらいし・まさのり)

東京都昭島市生まれ。90年に信州大入学。94年4月、大学生協(東京地域)に就職し、早大生協に勤務。04年12月に東京農工大生協に移籍して工学部店に勤務。05年春、「ひとことカード」がインターネットで話題に。同年11月に「生協の白石さん」が発売。08年11月、東京インターカレッジコープ渋谷店長に就任。今春からNHKラジオ「渋マガZ」に毎週出演。「生協の白石さんとエコごはん」(ソニー・マガジンズ)が09年刊行。

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