
――自動車メーカーの主戦場が先進国から、中国やインドといった新興国になり、いかに安く車を作れるかが勝負になっています。
いまの社是の「質の高い商品を適正な価格で」という言葉は嫌いです。「良いものを安く」なはずです。日本でも、新車市場の4割が軽自動車になったということを、もう1回考えないといけません。「軽ではもうからないから、より大きな車に力を入れよう」という議論もあります。だが、待てよと。お客様は軽で我慢をするのでなく、むしろ軽がよい世界になってきたんです。
――ホンダのDNAとされるF1から撤退しました。何を新たなホンダの「旗」に掲げますか。
いまのホンダは、商品開発こそがレースです。もともと、F1は私たちの技術の優秀性を証明するためにやってきました。だから勝たなければいけないのです。ところが、結果が出なかった。
創業期に比べ、ホンダは会社の規模が大きくなりました。そうなると、一つひとつの商品に人間らしさを集中しにくくなります。最近、販売店の人などから、「ホンダの車からホンダらしさがなくなった」と言われることがあります。そう言われないような商品を、スピード感を持って出すことが大事なのです。
「温厚そう? 歴代トップと同じで負けず嫌いですよ。一度目標を掲げたら、絶対に引き下がりません」。ホンダが2009年10月9日に発売した新型ステップワゴンの開発責任者を務めた小西真さんは、こう語る。
ステップワゴンの売りの一つは、クラス最高水準の燃費。07年にトヨタ自動車が、ホンダの計画を上回る燃費の新型車を投入すると、伊東はハッパをかけた。「今の燃費じゃ絶対に許さない」。ステップワゴンの燃費はトヨタの新型車と同じになった。
トヨタや日産自動車などが巨額の赤字に陥る中、「小型車重視」の戦略が当たったホンダは、09年3月期も純利益を確保。UBS証券の吉田達生シニアアナリストは、ホンダを「世界で最も死角が少ない車メーカー」と評する。
だが、課題は多い。エコカーの本命とみるハイブリッド車(HV)は、09年2月に発売したインサイトこそ人気だが、販売台数、車種数ともにトヨタを大きく下回る。
新車開発を担う本田技術研究所の社長を兼務し、リーダーシップの発揮を狙う。まずは、来年中に発売する小型車フィットのHVの出来栄えが試金石になりそうだ。
(大日向寛文)
(更新日:2010年06月15日)



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