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beロゴ2009年12月26日付紙面から
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舞浜倶楽部・新浦安フォーラムの中庭でダイニチの六井元一社長(右)と=千葉県浦安市

誰もが尊厳ある人生を全うしたいと思う。だが2015年には、認知症を患う人は250万人に達するという。「治すのは難しいが、緩和はできる。社会が優しく受け入れる仕組みをつくること、それが私の仕事」

千葉県浦安市の住宅街にある「舞浜倶楽部・新浦安フォーラム」は活動拠点であり、スウェーデン式認知症ケアのショールームでもある。2、3階は有料老人ホーム、1階では認知症専門のデイサービスと宿泊も可能な多機能施設を運営している。

ロビーに入ると、マンドリンのような音色が聞こえた。お年寄りたちが楽器を弾いている。羽子板のような形に弦が4本、棹(さお)の真ん中にレバーがあり、左右に動かして和音を選ぶ。

「ブンネギターです。弾いていると自然と歌詞が口から出て思いもかけない笑顔を見せてくださる」。手ほどきする島村孝範さんは声楽家の職員。11月には小学生や合唱団とベートーベン「第九」を合奏した。「介護者と利用者が達成感を共に体感する。ケアの現場で一番必要なこと」とグスタフさん。

命が危うい未熟児をただ見守るより、心を込めて触れた方が生存率を高めることがスウェーデンで確認された。触れて癒やす手法を認知症に取り入れたのが「タクティールケア」。スタッフが女性に施していた。指、手のひら、背中などをゆっくりと愛撫(あいぶ)する。女性のこわばった表情がだんだん緩み、うっとりした顔で眠りについた。

日本に初めて来たのは高校2年。剣道を学びたい一心で10カ月間、ホームステイをした。会う人がみな「スウェーデンの福祉」を口にする。米国では「税金が高くてかわいそう」と言われたのに、日本人に評価してもらえるのがうれしかった。

何度も行き来するうちに日本に住みたいと思うようになり、「自分を生かせることは何かと考え、スウェーデンの成果を伝えようと思い立った」。ストックホルム大で福祉を学び、日本では250カ所の施設を見て回った。狭い部屋に5〜6人が身を寄せ、認知症患者がベッドに縛られている場面も目にした。「ここに厄介になりたくないですね」と語る経営者もいた。

調査結果を修士論文「理念から見た介護の質」にまとめた。そして28歳でスウェーデン福祉研究所を駐日大使館内に立ち上げる。介護サービスを普及させる国策に沿った会社。介護保険が動き出した日本は有望な市場だった。

「介護はサービスの質が決め手。確固たる理念がないと質は保てない」。スウェーデン福祉の伝道者として説いて回るうち「言うことは分かった。自分で運営してみないか」と声がかかった。社宅用の賃貸マンションなど不動産業から、老人ホームに進出しようとしていたダイニチの六井(むつい)元一社長だった。

スウェーデンは100年余り高齢者問題に取り組んできた。米国への移民で老人がとり残されたからだ。「国が崩壊する」という危機感から教育や貧困対策に力を注ぎ、福祉国家に行き着いた。高い税金でも人々は国を捨てない。尊厳ある晩年が約束されているからだ。

「成熟社会は、対価を払っても質の高いサービスが求められる」と確信する。ただし、多くの人が利用できる対価に抑えたい。理念を形にするビジネスへの挑戦が続く。

プロフィール

グスタフ・ストランデル

ストックホルム郊外のテルソーに生まれる。姉2人の5人家族。中学の頃から剣道の道場に通う。高校時代、第3外国語で日本語を学ぶ。交換留学で早稲田大学高等学院へ。95年、ストックホルム大に入学。3年のとき北海道東海大(現・東海大)に留学し、日本の福祉に関心を持つ。99年、スウェーデン式の介護を日本に紹介した京都大の外山義(ただし)教授(故人)の指導で日本の介護現場を調査。02年、スウェーデン福祉研究所を設立し、介護施設の調査などにあたる。ダイニチのグループ企業「舞浜倶楽部」の運営に参加し09年、総支配人に。妻静華さんと1男1女の4人暮らし。

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