
――スウェーデン式介護のショーウインドーですね。
認知症になったら私はこんなところで暮らしたい、と思う施設にしました。理想を語っても、結果を見せなければ世の中は納得してくれません。日本の制度の枠の中で結果を出すには、資金力があり理念に共感してくれる企業と組み、自治体と良好な関係を持つことが必要です。ダイニチの六井元一社長は早くからスウェーデン式が日本に必要だと考え、理念に賛同してくれました。浦安市も福祉を政策の重点に置き、密接に連携しています。志の高いスタッフが集まり、こんないい条件が整った施設はないと思っています。
――入居一時金1880万円は高くはありませんか。
他のホームに比べ価格は低めに抑えています。介護はマンパワーの塊です。ここにはスウェーデン式ケアの研修施設もあり、デイサービスなど現場でスタッフが鍛えられています。入居者3人に職員2人が配置され、基準を上回る人手をかけています。サービス水準に自信はありますが、豪華さは誇らず、普通の生活とおいしい食事を心がけています。
――日本では「中福祉・中負担でいい」という考えもあります。
「中途半端」と言っているようなもの。そんな言い方をする国はありません。福祉社会は活力が落ちるというのは迷信です。スウェーデンは成長率も高いし、競争も盛んです。福祉と教育に力を入れた結果、安心できる社会になり、個性的なビジネスが生まれています。税金が高いと金持ちが逃げ出すというのもウソです。かつて何人かいて話題になりましたが、また戻っています。税金が高くても居心地がいい。
問題は何にカネを使うかです。人口が少ない国だから可能だというのも誤解です。政府が福祉にカジを切ったとき、同時に地方分権を進めました。教育と福祉は自治体の仕事。税金がどう使われているか、市民に分かるようになっています。高福祉・高負担は政治が信用されていることの表れだと思います。
NPO法人コミュニティ・ケア・ネットワーク代表の廉隅(かどすみ)紀明さんは、かつて高級老人ホームに携わっていたが、「豪華でも社会から隔絶した施設は息苦しい」と、東京・大森で中古マンションを改装した老人ホームに取り組んでいた。そこにグスタフさんが調査に訪れた。「澄んだ目が印象的で、正直な人だなと感じた。その通りの真っすぐな男です」と言う。「日本とスウェーデンをつなぐ貴重な人材。企画力があり、自分から動く」。舞浜倶楽部に紹介したのが廉隅さんだ。
スウェーデン福祉研究所を立ち上げたときの同僚、大橋原子(もとこ)さんは「感激屋さんですね。心に響くと熱くなって一直線に走り出す。認知症ケアがこれだけ広まったのもグスタフの力があったから」。
スウェーデンの福祉政策を研究する東京経済大の西下彰俊教授は「絶妙なバランス感覚の持ち主。スウェーデンで心配りや気配りをオムソーリと言うが、彼はミスター・オムソーリ」。指導教授が同じという縁で講義やコンパに誘った。ゼミ生の評価は「日本人より日本の福祉に詳しく、演歌と剣道がうまいスウェーデン人」だったという。
(山田厚史)
(更新日:2010年08月17日)



※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox1.5以上、Macintosh Safari 1.3以上、Firefox1.5以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。