
――同じアップルの携帯電話iPhone(アイフォーン)なども含めて、機器は高性能になる一方でどんどんコンパクトになっています。
画像が鮮明で持ち運べ、高度な処理が可能で通信もできる。しかも安価。そうした機器が普及してきたことで、大きな変化が起きています。ジュネーブでは、救急車で運ばれてくる患者の心拍数などのデータが医師のiPhoneにリアルタイムで送られる仕組みがあります。患者の到着前に治療方針を検討できるのです。ドクターヘリにも搭載できる。これも研究中です。
――手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」も研究しています。
ダ・ヴィンチは手先の動きを、離れた場所に伝えて操作します。手ぶれ補正機能もあり、非常に精密な操作が可能。将来はへき地医療に役立てられないかと期待しています。専門医がいない地域でも、高度な手術ができるのではないでしょうか。
――医療知識を一般の人にもっと普及させたいとも語っています。
よく医療崩壊と言われますが、少しのけがでも救急車を呼ぶのは、知識が乏しくて安心できないからという面もある。技術や知識を医師の領域に抱え込むのではなく、解き放って、人々が自分で病気の判断や予防ができるのが理想。例えば一人ひとりが自分の医療データを持ち、iPadなどを操作して判断できるようになれば、不安は大幅に解消される。私は「医領解放構想」と言っていますが、技術の進歩はそうしたことも可能にしていくと思っています。
杉本さんが扱う臓器や血管のリアルな3次元画像が医療現場に役立つことは、素人が見ても理解できる。
「でも彼を招いた理由はそれだけではない」と、神戸大医学部の東健教授は言う。「日本の医療現場では、残念なことに海外製医療機器のシェアが大きい。医師自身が開発に参加して、日本発の技術を作っていくべきだと感じていた。そのためにはやはり個人の能力が重要で、彼にはその力があると思ったのです」
内閣府などの先端医療開発特区(スーパー特区)に採択された「消化器内視鏡先端医療開発プロジェクト」などで、手術や治療の道案内になるナビゲーションシステムの開発が、「特命講師」としての杉本さんの役割だ。
内視鏡の発明によって、医療は大きく進歩した。東教授が期待するのは、そうした新しいイノベーション(技術創出)だ。「現場からイノベーションが生まれるようになれば、若い医師や学生の意欲は間違いなく上がるし、確実に患者さんのためにもなる。医療だけでなく、これからの日本にとってきわめて重要なことだと思っています」と話している。
(丹治吉順)
(更新日:2011年02月15日)



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