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フロントランナーセレクション - 朝日新聞「be」のトップコンテンツから選りすぐりのひとをウェブで

beロゴ2010年8月7日付紙面から
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まずは何でもチャレンジしてみるという行動派。社長室の壁にはテーマカラーのピンクを使用している=東京・多摩

主婦たちの口コミはあなどれない。シャボン玉のように飛んでいく。その方向はコントロールできないし、すぐに割れてしまうこともある。でも、少しだけ長持ちさせる工夫はできるはず……。「消費のプロ」である主婦と企業をつなぐのが役割と心得ている。

始まりは、育児サークルだった。大学在学中からフリーアナウンサーとして活動を始めた。男女雇用機会均等法の1期生。テレビ局やイベントの司会を務め、忙しいながらも充実した毎日を送っていた。

最初の結婚後、29歳で長男を出産。ところが、子どもが生まれたとたん、育児に大半の時間を割かれるようになり、今までできていたことが急にできなくなった。外出すらままならない。同じ境遇の友人たちは「働こうと思って面接に行っても、風当たりが強い」とこぼした。「子どもがいるだけで何もできないなんて」。母親は出てくるなと、社会からはじき出されたような気がした。

社会の一員として認められたいという気持ちは、日ごとに強まっていった。同じ思いを抱えるママ友に電話をかけた。「頭に来た。何かやろうよ」。そうして1995年に設立したのが育児サークルの「PAO」だ。

お母さんが主役になれる場所づくりを目指し、会報誌を発行したり、親子で楽しめるイベントを企画したりした。自身が住む東京・多摩ニュータウンを中心に口コミで広がり、いつしか会員は1500人に増えた。

これだけの人数が集まれば、もっと何かできるのではないか――。法人化を視野に入れ、動き出した。まずはプログラマー集団を作ろうと計画したが、知人のIT社長に「そんなに甘くない」と一蹴(いっしゅう)された。ならばと素人集団でもできる仕事を作り出すことにした。

人に会うたびに「1500人のママがいるんですが、何かできませんか」と尋ねてみた。そうするうちに、広告会社の知人が、平均的な生活水準にあった多摩ニュータウンをメーカーがアンケートによく利用していると教えてくれた。

おぼろげに見えてきたのが、母親世代の主婦たちによる口コミマーケティング。腕試しで、スポーツメーカーが親子向けに作った店舗のリポートを任された。「主婦目線」のリポートは思いのほか評価され、次々に仕事が舞い込むようになった。

いち早くインターネットに目をつけた。子育てや介護など、さまざまな事情で外に出られない人たちが、ネットというバーチャル空間のなかでつながることができる。会員は1万、3万人と年々増え、10万人に。

依頼を受け、覆面店舗調査や商品開発のための意見収集などの仕事を会員に発注する。本当に売れる商品やサービスに必要なのは、「消費のカギを握る主婦の本音」だと考える。

「つり戸棚をやめて対面式のキッチンカウンターを作って」「サイトのここが使いづらい」。アンケートや座談会で挙がった意見の一部が、実際に伊藤忠都市開発のキッチンや、コープネット事業連合のネットスーパーなどで採用された。

人生のキャリアを、いまは社会につなげられていない人が、もっと活躍できる場を提供したい。社名には、そんな思いが込められている。

プロフィール

堤香苗(つつみ・かなえ)

神戸市出身。1987年に早大第一文学部を卒業後、在学中から活動していたフリーアナウンサーに。26歳で結婚、29歳で長男を出産。95年に育児サークル「PAO」を設立し、翌年にキャリア・マムを立ち上げる。00年に株式会社化し、社長に就任。主にコミュニティーサイト(http://www.c-mam.co.jp/)で会員を募り、30〜40代の母親世代の主婦を中心に約10万人が登録。10年1月期の売上高1億5400万円、従業員約40人。38歳で再婚、翌年に次男が誕生。

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