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beロゴ2010年10月9日付紙面から
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「生きる権利」全うには「知る権利」が必要

――創刊のきっかけは。

03年に東京の講演で「背中を押されたら雑誌を出す」と言うと、参加者200人の3分の1が賛同し「250万円出す。定期購読者100人を受け持つ」と約束する人も出た。「定期購読者が3千人になれば、やる」とメールを流したら、すぐに超えた。父が他人の保証人になって財産を失った苦い経験から慎重になり「5千人を超えたら、可能だ」と言ったら、5千人を超えた。もうやるしかなかった。

――刊行を続けるうえで危機はなかったのでしょうか。

「もう、つぶれるかもしれない」という危機は、半年ごとにあった。4人いた社員が創刊の直後にみんなやめてゼロになった。3年目にもまたゼロになった。そのときには大手出版社への身売りを考えました。夢だけではやっていけません。

編集部で若者に体験を語る。右奥に並ぶのはバックナンバーの表紙だ=東京都世田谷区

――ジャーナリスト活動で転機となった出来事は。

76年のパレスチナ取材で息子をイスラエル軍に殺された男に会った。彼は「なぜあのとき来てくれなかったのか」と泣きながら私にくってかかった。海外のジャーナリストが現場にいれば、軍は蛮行を控える。それを聞いて、ジャーナリストには抑止の役割もあることを悟った。ジャーナリストは不正に対する監視役だと思った。後に難民キャンプで無残に殺された子どもの遺体を見て、悔しくて泣いた。監視の兵士はパラソルの下で読書していた。「おれを生かしてしまったことを後で悔やむようにしてやる」と心に誓いました。

爆撃も放射能も

――ジャーナリストとは何でしょうか。

人にはだれも「生きる権利」がある。選挙で選ばれた人が国民みんなのことをきちんと考えるとは限らない。利益を失いたくないために都合の悪いことを隠す人々がいる。「生きる権利」を全うするためには「知る権利」が必要だ。それを仕事としているのがジャーナリストです。人間の命と権利を守るのが基盤です。権力に絡め取られてはならない。フォトジャーナリストと自称しているのは、写真家でなくジャーナリストだという意志を込めたからです。

――爆撃の現場に自ら飛び込んで、怖くはなかったのですか。

目の前で戦車が砲撃したとき、下半身が震えて立っていられなくなった。でも、ファインダーをのぞくと立ち直れた。自分が自分でいるための武器がカメラだった。虐殺現場に入るとき、生きては出られないかもしれないとカセットレコーダーのスイッチを入れたまま入った。それが死後の証言をしてくれるかもしれないと思ったからです。

――チェルノブイリ原発事故の取材で現地に入ったとき、身体が放射能に汚染されるという不安はなかったのですか。

記録に残さなければならないという気持ちの方が勝った。人間の尊厳が冒されているのだから、伝えなければならない。伝えないと運動にならない。放射能の検知器を持って行ったが何度も吐き気がし、のどや腹に激痛が来た。案内してくれた人の半分以上ががんで亡くなりました。

――ジャーナリスト活動だけでなく、NGO活動までしています。

難民キャンプで犠牲者の遺児の救援をしている女性教師が「なぜ死んだ人ばかり扱うのか。残された子どもを助けることはもっと必要ではないか」と言った。それに共感し、遺児24人のリストをもとに「パレスチナの子供の里親運動」を設立し、これまでに5億円を贈った。「パレスチナ子どものキャンペーン」もつくり幼稚園などを建てた。チェルノブイリでは取材のたびに、コンテナ何台分かのミルクや薬品を現地に届けた。「チェルノブイリ子ども基金」では9億円の支援をしてきました。

――なぜ、そんなことまで。

人が亡くなったり傷ついたりするのを目の前で見るのは悔しい。あきらめたくない。自分に最低限できることはしようと思った。現場を知った以上、自分の手で薬や食料を届けようと思いました。

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