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beロゴ2011年4月30日付紙面から
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「日本画への興味は尽きない」と語る。背景の絵は鈴木其一「四季花鳥図」(江戸後期)=東京都内

東京・JR恵比寿駅から徒歩約10分。広尾の街に立つ山種美術館は2011年の4月上旬、平日の午後というのにロビー、カフェ、ショップに人があふれ、展示室は熱気に満ちていた。「ボストン美術館浮世絵名品展」。中高年が中心ながら、若い女性やカップル、外国人の姿も。2月26日から4月17日までの会期中、同展は約5万8千人を集めた。

3代目館長になって4年。「一人でも多くの人に日本画の素晴らしさを知っていただきたくて、リスクは承知で移転しました」。2009年に現在地に新築、開館させた。

柔らかな物腰の中にりんとした空気が漂う。花を守る番人が「花守」なら、絵の番人は何と呼べばいいだろう。

山種美術館は1966年開館の、日本で最初の日本画専門美術館だ。「相場の神様」と言われた山種証券創業者、故山崎種二さんが創設した。重要文化財の竹内栖鳳(せいほう)「班猫」、奥村土牛(とぎゅう)「醍醐」など約1800点を所蔵、作品群は質の高さで定評がある。

その「老舗」美術館を祖父種二さん、父富治さんを経て継いだ。しなやかに、強い意志で改革しつつある。

新築後、展示室は地下に設けた。繊細な日本画を、温度や湿度、直射日光の影響から守るためだ。照明にも独自のシステムを採用、作品ごとに個別に調整している。

コンセプトは「上質のおもてなし」。館内は完全バリアフリー、展示室はハイヒールでも音が響かない床材を使った。クリアファイルなどオリジナル商品のデザインにも関わる。カフェのメニューを展示に合わせて提案したり、女性誌とタイアップした鑑賞会を催したり。博士号を持つ研究者として解説もする。

もともとは絵に描いたようなお嬢様で、現皇太子妃候補と騒がれたこともある。父方が山種証券創業家なら、母の故弘子さんは「味の素」創業家一族の出身、美智子皇后の学友だった。

将来は画家になりたかった。物心がつくと祖父のひざの上で、床の間に掛けられた名作を眺めていた。祖父に「何がほしい」と聞かれて「絵の具と画用紙」と答えるほど、絵が好きだった。

大学では、実家の証券会社で働くつもりで経済学部で国際金融論を学んだ。だが、卒業前、子供のころの記憶があふれ出した。「絵で社会に貢献するような仕事がしたい」と、美術館を継ぐことを決意した。一から勉強し直し、2浪して東京芸大大学院に入学。学長だった故平山郁夫さんに「絵描きの気持ちがわかる館長さんになって」と言われ、美術史を専攻しながら日本画も描いた。

幸い、移転後の実績は順調だ。自身の研究テーマである日本画家・速水御舟(はやみぎょしゅう)の展覧会など意欲的な企画を次々と実現。皇室の方々も訪れ、マスコミでもたびたび話題になる。来場者数は移転前の約2倍、年間20万人を超えた。

展覧会が終了すると、人気の消えた展示室で、ひとりじっくり絵画を眺めることもある。なぜですか?「やっぱり絵が好きなんです」。番人はひっそりとほほえんだ。

プロフィール

山崎妙子(やまざき・たえこ)

1961年生まれ。東京都出身。幼稚園から聖心女子学院に通う。中学時代の担任は皇太子さまの元侍従・浜尾実さん。高校から慶応に。小学校の頃からテニスに熱中。中学時代は全日本16位、高校時代は関東大会2位になる。東京芸大大学院では速水御舟の研究で博士号取得。現代美術家の村上隆さんが同期。2007年に山種美術館館長就任。学生時代からの付き合いで、美術館顧問の明治学院大学教授・山下裕二さんは「とにかく謙虚で勉強熱心。山種美術館の倉庫には近代、現代の名作が多数眠っている。今後、彼女がどうやって、これらの作品を公開していくのか楽しみ」。30歳の時、転倒。大腿(だいたい)骨けい部を骨折し3カ月入院。「一生足が不自由になる」と医師に宣告され、2年間、松葉杖の生活を送った。いまも後遺症による痛みと闘う。2歳上の夫は慶応義塾大学法学部教授。13歳と11歳の男の子がいる。座右の銘は「一笑一若一怒一老」。

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