朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ヘルプ

  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

フロントランナーセレクション - 朝日新聞「be」のトップコンテンツから選りすぐりのひとをウェブで

beロゴ2012年8月4日付紙面から
  • ページ1
  • ページ2
  • ページ3
洋服や化粧には気を使う。複数の人の意見を聞き、コーディネートする=東京都千代田区
洋服や化粧には気を使う。複数の人の意見を聞き、コーディネートする=東京都千代田区

生まれつき目の病気を患い、高校生の頃には失明。インドから米国への移民の娘。シーク教の厳格な戒律を娘にも守らせた父親は13歳の時に、心臓発作で突然死……

困難の多い、劇的な人生は「運命」か、「偶然」の産物か。あるいは、困難を乗り越え、学業の道に進んで現在の立場にたどり着いたことを「選択」の結果とみるか。自身への問いかけが、研究内容とそのまま重なる。

「私たちの人生がどこへ行くのか、どうやってそこにたどり着くのか、最も強く決定づけるのが一人ひとりの選択だ」と語る。

一昨年に出版した初の著作のタイトルも『選択の科学』(文芸春秋)。いくつもの事例を引用しながら、物事を選ぶ事によって得られる可能性だけでなく、その困難さ、つきまとう代償に焦点をあて、話題となった。

名前を広めたのも、主体的に選ぶことの難しさを示した、大学院生の時の実験だった。試食用のジャムがスーパーの店頭に24種類並んでいた時と、6種類しかない時とで、買い物客の反応はどう変わるのか。多くの種類が並んだ場合、試食をする人は確かに増えた。しかし、展示品を絞った方が、ジャムの購入者が圧倒的に多かったのだ。

選択肢が多すぎると、人間の判断能力を超えてしまう。「全く予想をしなかった」と本人が言う結果は小売業界の常識に反したが、その後も実証されている。米国の有名シャンプーが商品ラインアップを半減させたところ、売り上げは10%伸びた。7月に来日した時には、資生堂が社員向けの講演を依頼するなど、日本企業も注目する。

昨秋には、ハーバード大の政治哲学者、マイケル・サンデル教授らの講義で話題となったNHK・Eテレの「白熱教室」シリーズにも登場。5回にわたる講義が放送された。番組を手がけた寺園慎一プロデューサーは「よりよい選択の追求は、誰もが日常的に向き合う課題。その能力を実践的に高める内容が視聴者の関心を集めた」と話す。

反響が特に多かったのは、重要な選択を記す「選択日記」の提案だ。最強を誇ったチェスの王者。演習で米軍を追い込んだ退役軍人。95%の確率でうそを見破る大学教授。一見、無関係に見える「選択の達人」に共通するのは「過去の判断を何度も検証し、『情報に基づく直感』を養ったこと。選択の内容を日記に記録することで、誰もがこういう能力を高められる」と説く。日本では今夏、専用の日記帳も書籍化された。

「選択とは、将来と向き合うこと。だからこそ、普段からの思い込みや、判断が誤った時の理由も検証し、結果を率直に議論して初めて、その可能性を実現できる」

講演依頼はひっきりなし。日本の直前はイタリア、直後は南アフリカへと向かった。情報があふれ、可能性が無限に広がる現代、幸福を生み出す最良のチョイスはどこにあるのか。世界中が答えを求めている。

プロフィール

シーナ・アイエンガー

1969年、カナダ・トロント生まれ。3歳で両親と米国へ移住。盲学校には通わず公立高校からペンシルベニア大へ進学。スタンフォード大学院で博士号(社会心理学)を取得。同じ病気を患い、やはり失明した妹は、ワシントンで弁護士として働く。

大学院生だった1995年には研究のため、京都大で4カ月間過ごした。受け入れる側だった北山忍・ミシガン大教授は「とにかく何にでも積極的だった。目が不自由と聞いていたので心配していたが、来てみたら何も問題なかった」と話す。滞在中にレストランで「緑茶に入れる砂糖を」と注文し、ウエーターに断られた話は、選択の自由が文化によって異なる例として、しばしば引用する。

家族は、スタンフォード大で知り合い、ともにコロンビア大で教える夫のガルードさんと、7歳の息子。夫は信教も異なり、当初は互いの家族が結婚に反対したが、「愛は選択ではなく、運命の問題」。休みの時はブロードウェーでの観劇やジャズ鑑賞を好む。「暇になると、新しい料理のレシピを考え出すのが好き」

次のページへ
バックナンバー

関連ページ

画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox1.5以上、Macintosh Safari 1.3以上、Firefox1.5以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。