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 ネルケさんの禅生活

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言葉その16If not now, then when?

佗(た)は是れ吾にあらず・更に何(いず)れの時をか待たん。

(典座教訓)

道元禅師はやがて中国大陸への上陸を果たしました。出家してすでに十年が過ぎていましたが、日本では納得のいく教えに出会えなかった禅師は待ちに待った「本物の仏教」を目の当たりにします。

ところが、最初はがっかりすることも多かったようです。伽藍(がらん)を大きくしようとばかり考えているご住職様、時の権力者にこびへつらうご住職様、キンキラキンのお袈裟(けさ)を自慢するご住職様……まるで、今の日本仏教のようでした。

ところが、あるお寺で別の典座と出会います。真っ昼間の一番暑いときに、石畳の上で「苔(たい)」を干していたのです。この「苔」の正体について、諸説あります。まさか、コケを食べていたわけではないでしょうから、きのこの一種という説と、海藻という説が有力と思われます。

庭に生えた雑草を干していたという人もいます。いずれにせよ、やはり年老いた典座ががんばって自分の役を果たそうとしていたのです。

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手に竹杖を携へ、頭に片笠無し。天日熱し、地甎熱す。汗流れて徘徊すれども、力を勵め苔を晒す。稍(やや)苦辛を見る。背骨弓の如く、龍眉(ほうび)鶴に似たり。(典座教訓)

(手には杖をもっているが、頭には笠がない。日も熱いし、石も熱い。汗を流してふらふらしながらがんばって干し物をしていた。しんどそうに見えた。背は弓のように曲がっており、眉は鶴のようだった。)

それをみた道元禅師は問いかけました。
「典座さんは出家して何年になりますか。」
「68年だ」
「どうしてお手伝いさんを呼ばないのですか」
「人のやったことは、自分のやったことにはならない(佗は是れ吾にあらず)」
「典座さんの修行に対する、まじめな気持ちは分かりますが、どうしてその作業を一番暑い、このときにしなければならないのでしょうか」
「今やらなければ、いつやるというのだ(更に何れの時をか待たん)」
この有名な問答で、禅師ははっと気づいたことがあったようです。生活そのものが修行。今、ここ、この自分の足下がその道場。仏法を遠くに求めてしまった年月の長かったこと……。

さて、この「更に何れの時をか待たん」という言葉を聞くと、トレイシー・チャップマンの“If not now”を思い出します。私がちょうど 二〇歳だったときに、この曲の入った彼女にデビューアルバムが出ていました。そのレフランが“If not now, then when?”、「今でなければ、いつ?」という問いかけでした。 私が大学生活を送りながら、ベルリンのある坐禅道場に通い始めていたころによく聴いていた、思い出深い曲です。

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