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「どらく編集委員」通信

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両極のコラボが導くもの どらく編集委員 松任谷 正隆さん

ユニクロが発売した「+J」というレーベルのことで大騒ぎをした。+Jはファッション誌が発売前からこぞって大きく取り上げていたから、ちょっとおしゃれに興味のある方ならご存じだろう。何を隠そう、ジルサンダーデザインのユニクロである。これの何がすごいって、まったく両極をいく二者が手を結んだところにある。

ユニクロの説明をする必要は今さらないだろうが、ジルサンダーについてはちょっと必要かもしれない。ジルサンダーと言えば、ミニマリズムで一世を風靡(ふうび)したデザイナーである。メンズコレクションのスタートは10年ちょっと前から。無駄がなく、割合つるんとした服たちは、しかしディテールには凝っていて、プライスはかなりのもの。ジャケットで30万円前後だった記憶があるから、当時としてはかなりハイエンド商品である。

ところが何が起きたのか、2000年、ジルサンダーからジルサンダー本人が追い出されて、ジルサンダーブランドには別のデザイナーが就任。ジルサンダー本人は自分の名前が使えなくなってしまうという、なんだかわけのわからないことになった。別のデザイナーが就任したジルサンダーブランドは、やはり本来のジルサンダーのカラーを失い、少なくとも僕には迷走を続けているように見えた。もっとも、ラフシモンズがデザイナーとして就任したここ数年、ちょっと面白くはなっていたが……。

まあ、ファッションに興味のない人にはどうでもいい話ではあるが、旧来のジルサンダーのファンとしては、彼女の動きが気にならないはずはない。それが、ユニクロと手を組むなんて……。

しかも、ハイエンドのプライスは今度はある意味ローエンドになると言うのだ。これはファッションの革命だ! いや、破壊だ! いろいろな意見が飛び交う中、いよいよ発売になるというのだ。限定商品ゆえにあっという間にソールドアウトになるだろう、と予測した僕は、前述の通り、ありとあらゆるルートを使って情報を仕入れ、これはかなり倍率の高い戦いになると想像をし、そしてその日を待った。まあ、アイテム数は20くらいとして、2点でも手に入れられればいいだろう、くらいの覚悟で。

当日の朝、ホームページにはさっそく+Jの名前があった。なんとインターネットでも買えるという。一瞬、キツネに化かされているような気持ちになった。だって関係者の話でも、当日は長い列が出来るだろうと予測されていたからだ。1時間できっと商品は全部なくなると読んでいた僕は、もろに肩すかしである。最後の最後にきっと蹴られるに違いない、なんて思いながら、次々に商品を買い物かごに入れる僕。けれど、何のことはない、注文決定ボタンを押すまで何も問題なく進行。2日後には商品が何事もなかったかのように届いた。

さて、これはいったいどういうことか。友人のスタイリストの想像では、平均的ユニクロユーザーはジルサンダーなんて知らない、ちょっと値段の高いユニクロには興味がないのではないか……という。逆にファッションおたくは、人とバッティングするに違いない商品は、欲しくても買わない、と思ったのかもしれない。また、それまでハイプライスゆえに買っていたユーザーは、ロープライスになったものは怖くて買えないのかもしれない。いやいや、そもそも実は限定なんかじゃない……。

いろいろな憶測ができるが、僕はこの+J肯定派である。まさしくジルサンダーデザイン。しかもサイジングが今度は日本人向けだ。若干、素材にチープ感のある商品もあるが、ある意味、それさえジルサンダーらしい、とも言える。どこかの国からきた安物服のように、1回しか着られない、なんてことは絶対にない。2シーズンくらいは全く問題ないだろう。それにしても昔だったら最低でも20万円はした商品が1万円ちょっと、というのは本当に変な気持ちだ。

と言いながら15万円ほどの買い物をした僕。次のシーズンも楽しみである。

私のお気に入り

写真

住友3M スコッチティント ピュアカット89

生まれて初めてカーフィルムなるものを見たのは、たぶん70年代半ばごろ。当時、松原というところに家賃20万円の一軒家を借りていて、クルマはベンツ280SE。そう、クルマ熱がどんどん高くなっていた頃だ。もちろん当時はクルマに関しては全くの素人。むさぼるようにクルマ雑誌を読みまくっていたっけ。その日は仕事で、例によって自分のクルマで自宅を出ると、甲州街道に出た。ふと目の前をスモークガラスのベンツが横切った。なんだ、あの黒い窓は……と思って後ろ姿を見たとき、それがただのベンツではないことがわかったのだった。それは当時、モンスターメルセデスといわれた450SEL6.9。この6.9の文字がなければ誰も気付かない、知る人ぞ知るメルセデス。迂闊(うかつ)にアクセルを踏もうものなら、タイアはスモークを上げドラッグスターのように身をくねらせながら加速する、と言われたあのメルセデスである。なぜか、あの光景をいまだに忘れていない。老夫婦が運転していたからかもしれない。

で、僕のしたことは、といえば、もちろん6.9を買うことではない。そんな高い車、めっそうもない。スモークガラス、つまりフィルムを張ることだった。そういう意味では、フィルム歴はずいぶん古いかもしれない。しかしいかんせん、今思うと、当時のフィルム素材、フィルム張りの技術、共にたいしたことなくて、ワンシーズンを過ぎる頃には歪(ゆが)んだり、シワが出来たりして散々だった記憶がある。それでも、芸能人やスポーツ選手たちには、少しずつ浸透していって、僕はそっちのほうがいやでフィルムを一切張らなくなった。

住友3Mから新しいフィルムがあるので張ってみませんか、という話があったとき、即座にいらない、と言った。しかし聞くうちに、どうやら当時と今では素材に雲泥の差があることや、ほぼ透明のまま紫外線の大半をカットできるなど、新技術が満載であることが判明し、では、ということで、恐る恐るお願いしてみることにした。一応、今はモータージャーナリストの肩書もあるしね。

一番効果があると言われたフロントガラスは、やっぱり若干暗くなった。カメラのレンズで言うところのF1.4がF2くらいになった。だから、真っ昼間にトンネルに入ると若干怖い。

しかし、クーラーの効きはまるで別物になった。きっと紫外線もかなりの勢いでカットされていることだろう。女性ドライバーにはお勧めの商品かもしれない。ガラスの歪みは今のところ皆無。歪んでくる予感もないので多分大丈夫だろう。というわけで今はなじみつつある段階である。濃さは何段階かあって、やっぱり濃いほうが性能的には上なんだそうだが、僕のお勧めは断然一番薄いやつ、である。これで十分だ。

まあ、濃い色を選んだとしても、芸能人が選びそうもないクルマだったらオッケーかも知れない。さもなければ当時の6.9に当たるようなクルマ、だろうか。今で言うところの何のクルマなのか、さっきから考えているのだがあまり思い当たらないでいる。

(2009.10.26)

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松任谷 正隆

プロフィール

松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)

音楽プロデューサー

1951年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。

20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。

1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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