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「どらく編集委員」通信

楽しいことをいっぱいしよう どらく編集委員 松任谷 正隆さん

今回をもって編集委員卒業ということになりました。編集委員というと半ばスタッフみたいですが、確かに最初の頃は、コラムのほかに「どらく」をレベルアップさせるためのアイデアを求められていました。僕が出したアイデアはたったひとつだけ。「もっと華やかに!もっとにぎやかに!」だったかな。中身がおいしく、見た目もきれいで、思わずそそるようなお弁当が好きなもので……。なんでも食べ物に例えてしまうのが僕の悪い癖、ですね。でも、始まった頃と今とを比べてみれば、格段に楽しくなっているのではないでしょうか。もちろん、僕の手柄だなんて言っているわけじゃありませんから……。

あの頃と比べて、たいして時間は経っていないのにいろいろなことが変わりました。少なくとも、自分とインターネットとのかかわりは数段濃いものになった。これは恐ろしいメディアですよね。これからは楽しいお弁当も、ただ楽しいだけじゃなく、主張が必要になってくるでしょう。「どらく」はビートルズ世代、つまり、まさしく僕らくらいの世代をターゲットにしているので、今後、どの分野においてもそれなりに、フォーカスをあわせてほしいと思います。新聞作りは本当に難しい。不特定多数相手ですから。それに比べれば、はっきりと「どらく」は世代を限定しているのだから、強引な論調もありなんじゃないでしょうか。不特定多数相手では書けないようなことをズバズバと書いてほしいです。独断と偏見で出来上がっていてもいいと思うくらい。どこもが同じようなことを書いている時代じゃありません。はっ、とさせてほしい。目を覚まさせてほしいですね。

ある筋から、今年から目に見えて新聞はなくなる方向になるだろう、と聞きました。いや、もちろん新聞がなくなるわけじゃない。紙に書いてあるあれ、配達されるあれがなくなっていくだろう、ということです。柔らかい液晶になるんでしょうか。いずれにしても、新聞から動画が見られたり、コマーシャルがどんどん変わったりするらしいです。想像できますか? 少なくとも素人の僕にはまだ想像ができない。なんともエキサイティングです。

さあ、そんな時代。音楽はもう配信の時代。車はモーターの時代。価値観はみるみる変わってきつつあります。硬いことを言わずに、なんでも経験しましょう。なんでも経験して、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、といいましょう。よくわからないものはよくわからないでいい。試して、失敗して、そして成長していくというのは子供だけの特権じゃありません。もっと楽しいことをいっぱいしましょう。ではまたどこかで……。

私のお気に入り

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カツとお茶バー「月夜野庭 銀の月」

僕の最終回のお気に入りは、月夜野(群馬県みなかみ町)にあるとんかつ屋さんです。なんだ、それ!なんて言わないでください。このページではいろいろなものを紹介してきました。世の中確かに便利になった。電話一本で、いや、人と話さなくてもちょっとコンピューターを開けば何でも買える時代。そして、結構有名なシェフたちが、電子レンジだけでオッケー、みたいなレトルトものを作っている。これが現代だ、とも思います。

でもね、便利は便利。それ以上でも以下でもない。その上に更なる満足感を得ようと思ったら自分で足を使わないとだめです。ちょっとだけ苦労して手に入れたものは、やっぱり残り方が違います。食べ物にしてもそう。僕は、コンビニがない時代に育った者のひとりとして、最後にはこういうものを提案したいと思います。

このお店は僕のいとこから教わりました。関越道の月夜野インターを三国峠と反対のほうに降りて、ほんの数百メートルの国道沿い。ふつう、絶対に入らないようなロケーション。こんなところにそんなおいしいとんかつ屋なんてあるのか?というような、うらさびれた場所にあります。ただし、靴を脱いでお店に一歩足を踏み入れると、これはちょっとただものじゃないかも……と思わせるこだわりが見え隠れする。

せっかくだからメニューを教えましょう。ここではセレクト、銀のコースを頼んでください。揚げものが4種類選べます。僕のお勧めはズワイガニのクリームコロッケ、そしてロースカツ、です。あとは好き好き。帆立て貝のフライもおいしかったしメンチカツもおいしかったな。とにかく4種類選ぶと、前菜から始まって、味噌汁、ごはん、デザートの自家製シャーベットまで付いて1700円。極めてリーズナブルです。そして、ここがポイントなのですが、揚げものは実にライト。揚げもの嫌いのかみさんや、友人が完食して、すぐにまた行きたい、と言い出すほど。岸朝子さんから教わったとんかつ屋さんにも行きましたが、個人的にはこっちのほうが好き。バランスがいいのです。

そして、もし行くのであれば、電話をして、スコーンを焼いた日に行って下さい。ここはカツとお茶バー、なんていう怪しげな看板からもわかるように、お茶にもこだわっている。そして4、5種類のお菓子を週替わりで焼いています。スコーンなんて……と思っていた僕がノックアウトされました。

でも考えてみてください。都心から下手したら2時間かかるんですよ。うちからは、まあ1時間半、くらいかな。こんな苦労をして、ほとんどスキー場のふもとまで出かけるわけですから、覚悟はいる。まあ、でも期待に応えてはくれると思います。あ、そうそう、夫婦2人でやっているのでちょっと待たされるかもしれない。でも、怒らないでくださいね。丁寧に仕事をすると、どうしてもそうなるらしいのです。もし、お店で僕と出会ったら、「どらく」見て来た、と言ってください。ごちそうはしませんけど……。

(2010.03.29)

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松任谷 正隆

プロフィール

松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)

音楽プロデューサー

1951年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。

20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。

1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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