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ボケが進んでいる、と思う。このあいだ、ゆずの北川悠仁君の名前が思い出せずに2日間苦しんだ。数カ月前には相棒の岩沢厚治君の名前が飛んだ。困ったものである。彼らとの距離感が微妙なせいもあるかもしれない。アーティストとしては仲良しだと思っているが、しょっちゅう一緒にいるわけでもない。仕事は数曲一緒にしたくらい。このくらいの距離感の人たちが実は一番やばい。つまり名前を忘れやすい。これを見たら彼らはショックを受けるだろうな。でも仕方ない。ボケだ。ボケのせいなんだ。
では、忘れた時のことを思い出してみよう。ゆず……えーと、誰と誰だっけ。と、自分の中で問いかけた。そう、人から聞かれたわけじゃない。自分で自分のボケ具合を試したのだ。で、最初に「岩」という文字が浮かんだ。岩沢君の顔が浮かんだのだ。そして次に北川君の顔が浮かんだ。えーと……。名前が出てこない。うなっても出てこない。しばらくいろいろなことを考えた。2文字だったな。○○だ。そこにいろいろな文字を当てはめてみた。村、とか、山、とか。今考えてみると川がつくわけだから、もう一歩のところだったのかもしれない。でも村と山で諦めて、岩のほうを先に考えることにした。岩……山じゃないし、岩……田でもないし、岩……村じゃない。しばらく考えるのをやめようと思った瞬間、岩沢という名前がするっと出てきた。ものすごくすうっとした気がした。ああ、これならもう一人の名前も思い出せる。と思ったのが逆にプレッシャーになった。
思い出せない時の心理状態は、ものすごく追いつめられたような気持ちである。どうなんだ、どうなんだ、どうなんだ……。結局もうひとりも沢がつくんじゃないか、と思うようになった。○沢。小沢か? いや、そんな名前じゃなかった。と、こんなことを繰り返し2日間が過ぎた。もちろん、四六時中彼の名前を思い出そうとしていたわけではない。でも、折に触れ、思い出そうとしていたことは事実だ。思い出すとプレッシャーを感じ、結局出てこない。最後は何のことはない、何もなしにするっと出てきた。北川君じゃないか。
この歳になると人の名前は飛ぶ、とよく聞く。でも、これはちょっとひどいんじゃないか、と思う。どのタイミングで病院に行ったらいいんだろう。ふざけているようでも実はけっこう深刻に考えている。今はこのあいだ、一緒に仕事をした、いきものがかりのメンバーの名前を思い出せないで苦しんでいる。誰も僕を助けないでください。
またまた面倒臭いものを紹介しちゃいます。米インテリア・雑貨ショップ「Pottery Barn」 のフレグランスディフューザー。それもWinter Forest という匂い限定です。
最初、ディフューザーなるものの存在を知らなくて、単純にポプリを買いに行きました。アメリカではポプリはうんと日常的なものですから、どこでも売っていると思った。ところが、ある年ショッピングモールに行ってみると、あの形状のものはほとんどない。その代わりに、このビンに棒を何本か差したような、変な物体を多数発見。これがポプリの代わりになるものだ、と知るのはさらに時間がたってからなんですけどね。それ以来、少しずつ買っては試した。で、最終的に行き着いた匂いがこれ。これ、本当に幸せの匂いがします。言葉ではなかなか表現が難しいけれど、人工的でない。人工的に作ったものなのに、自然の中にいるようです。部屋の中が澄み渡ったような、凛とした空気になる。雪が降っていなくても、外が雪のような気持ちになる。外が雪で、部屋の中は暖炉の匂い。そうか……暖炉の匂いに通じるのかもしれませんね。とにかく針葉樹の木の匂いなんです。
冬のシーズンにアメリカに行かれる方がいたら、ぜひ、買って帰ることをお勧めします。

(2010.01.25)
松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)
音楽プロデューサー
1951年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。
20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。
1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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