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「どらく編集委員」通信

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1枚の服にかける思い入れ どらく編集委員 松任谷 正隆さん

気に入った服は何枚かまとめて買う、あるいは色違いで買う、という人がいる。まあ下着だったらそれもありだろうと思う。しかしそうでない服、シャツでもパンツでも、もちろんアウターでも何でも、外に見える服をそうやって買うのは実にもったいないと思うようになった。

お金の無駄遣い……。それもある。買い物の楽しみを奪う行為……。もう1枚の服に出会えるチャンスを少なくするじゃないか。「これは絶対に似合う。このチャンスを逃したらもう買えないかもしれない」という思いがまとめ買いをさせるのはよくわかる。僕もそうだった。しかし、時は動いているのである。

今似合う服は、数年たてば必ず時代遅れになる。時とはそういうものであり、人間はそうやって歴史のページをめくってきた。大げさなようだが、一生ものなんてない……。少なくとも服に関してはそう思うようになった。今気に入った服よりも気に入った服は、将来必ず出現するのである。それが人間界の面白さであり、成長でもあるといえる。

もし思い入れのこもった、一生大切にしたい服が出てきたら、なおさら1枚の方がいい。かけられる思いがその方がずっと強くなるからだ。だから涙をのみながら1枚だけ買う。そして着倒れるくらい着て、その後はたんすの中で思い出としてとっておくのもよし、誰かにあげるのもよし、決して忘れ去らないことが一番大事だ。

たんすの奥から「あ、こんないいものが出てきた」なんて喜んでいる人がいたら、それは人生をほんの少しだけ無駄遣いした、ということに気付き後悔すべきだ。腹八分目の美学は服の世界にも通用するのだと思う。

(2007.10.01)

松任谷 正隆

プロフィール

松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)

音楽プロデューサー

1951 年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。

20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。

1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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