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「どらく編集委員」通信

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あがらないこつ どらく編集委員 松任谷 正隆さん

僕は東京都世田谷区で音楽学校を主宰しているんですが、授業の一環として僕がいつも研究生たちに伝えていることがあります。それは「あがらないこつ」です。

人はなぜ、人前に立つとあがってしまうか…。こんなことは僕にはわかりません。第一、僕はものすごい小心者ですから、人前では必ずあがります。あがらない、なんてことはきっと誰にもないんじゃないでしょうか。大きくあがるか小さくあがるか、それは人によって、状況によってまちまち。しかし、あがっても、それからどうするかで、その後が大きく変わります。すべては最初の一声にかかっているといってもいい…というのが僕の持論です。

最初の一声はいろいろな意味でもっとも大事なものだと思います。例えば結婚式で、よくおじさんが最初の一声で上ずって、その後スピーチがめためたになったりするじゃないですか。おじさんは最初の一声をイメージすることなく声を発してしまったために、スピーカーから流れた自分の声に驚いて、そこからそれまで頭の中にあった内容が全部飛んでしまった…。失敗の原因の1位がこれだと思いますね。

ですから、最初の一声を発する前にまずはイメージすること。これからマイクの前に立って、自分の声を聞くわけだけれど、それがどんなに自分のイメージと違っても驚かないように念じるのです。そして、最初の一声は自分のイメージよりも小さくはじめること。それとゆっくりはじめること。歌の場合も同じです。リズムぎりぎりいっぱい使ってゆっくりと歌う。スピーチならば…まあ、いくらでもゆっくり出来ますよね。なんならわざと空白を作って、自分が平気でいられるのを試してみてもいい。とにかく最初の一声で自分が驚かなければ、もうその先の成功は約束されたようなものです。

自分の声のニュアンスをフルに活用して、自分の伝えたいことを表情豊かに伝えればいいのです。しかし、イメージなんてそう簡単にできるものではありません。そういうときにはまず事前に現場を視察しておくことです。出来ればマイクテストもしておきたいところだけれど、まあ、無理なこともあります。大事なのはその部屋のアコースティック、つまり反響具合です。響き方を身体に入れておく。これはマイクを使わなくても大丈夫。何かそこで声を発すればすぐにわかります。それとついでに、自分の立ち位置から見えるものがどういうものなのかも見ておくといい。そして本番をイメージするのです。イメージしてイメージして、イメージよりもちょっと小さいところからゆっくりと始める。これからスピーチなどある方はぜひ一度試してみてください。

それでだめだったら…。一度僕の音楽学校に入学してください。

(2007.11.26)

松任谷 正隆

プロフィール

松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)

音楽プロデューサー

1951 年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。

20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。

1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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