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「どらく編集委員」通信

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フルーツポンチのサクランボ どらく編集委員 松任谷 正隆さん

僕は食べ物を残すのが嫌いだ。嫌いな理由は、人それぞれだろうが、僕の場合、残したものが捨てられ、それがゴミ箱の中で腐っていくことを考えると、いてもたってもいられなくなるのである。だから、みかんの皮でさえ出来ることなら全部平らげてしまいたい、と思うくちだ。この発想はなかなかないんじゃないか、と思う。異常な潔癖(けっぺき)症が僕のどこかに潜(ひそ)んでいる。だからもちろん、出されたものは全部平らげる。捨てさせるもんか。肉の脂身だって食べる。そんなところ、ちょっとくらい残したってダイエットの足しになんかなるもんか。

このあいだ、うちに遊びに来た同世代の女子たちと、昔フルーツポンチ(ああ、なんて懐かしい響きだ!)の上に乗っているサクランボを食べたかどうか、という話題で盛り上がった。ほとんどの女子は食べなかった、と答えた。ついでにこのあいだ一緒に仕事をした久保純子さんにも聞いたところ、彼女も食べなかったと答えた。そういえば、僕も一時期食べなかったことがあった。それは、多くの喫茶店ではあのサクランボを再利用している、という噂が立ったからである。女子たちはその噂をいまだに信じているのである。信じられん。もし、今日び再利用なんかしていたら、それこそ内部告発されるぞ。

僕が再びサクランボを食べ始めたのは、そんな馬鹿なことあるはずない、と信じたからでもあるが、食べないから再利用されるんで、だったら食べればいいじゃないか、ということでもあった。相互の協力関係は大事だ。はっきりいって、フルーツポンチのサクランボはおいしい、と思う。なんだろう、どこか懐かしい。あの曖昧(あいまい)な味が僕は好きである。

初めてアメリカに行ったとき、レストランで出される料理のボリュームにびっくりした。日本の倍はある。しかしもっとびっくりしたのは、アメリカ人たちがそれを大量に残すことの方だった。山と残された皿を平然と片付けるスタッフ。いまや見慣れてしまったものの、やっぱりあれを見ると心のどこかが痛む。ばちが当たるぞ、と思う。食べ物は生きている、と僕は思っているんだろうな。生きているものを捨てるなんて、なんたることか……。

つい最近血液検査をしたらコレステロールが288もあった。善玉コレステロールはそのうちたった50。ひどい値だ。こんなに食べ物を大切にしているのに、神様はいったい何を考えているんだろう。牛、と名のつくものを控えろ、と医者に言われて控えてはいるものの、やっぱり僕は皿の上のものを残せないでいる。

(2008.01.28)

松任谷 正隆

プロフィール

松任谷 正隆(まつとうや・まさたか)

音楽プロデューサー

1951 年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。

20歳のころよりプロとしてスタジオ活動を開始し、数多くのセッションに参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手掛ける。

1986年に設立した「マイカ音楽研究所」では、自ら校長として後進の育成にも力を注いでいる。長年に亘り「カーグラフィックTV」でナビゲーターを務めるなどモータージャーナリストとしても活躍。日本カーオブザイヤー選考委員。

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