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テレビ番組の収録で、幸運にも、葛飾北斎の娘、阿栄の作とされる数少ない作品を観る機会に恵まれた。阿栄の画号は応為といい、父の北斎からいつも、オーイ、オーイと呼ばれたことにちなむという。こういう洒落たネーミングからもわかるが、なかなかの男まさり。北斎工房の要だったかもしれない。阿栄は晩年まで北斎の仕事を手伝ったので、かなりの作品を残しているはずだが、これまでは無視されてきた。しかし、愛知県小牧市のメナード美術館にある『夜桜美人図』、東京の大田記念美術館にある『吉原格子先の図』に接して、ほんとうに仰天した。どちらも、まるで幻燈のような光と影の効果を表現した夜景図であり、レンブラントを知っていたのではないか、と疑いたくなるようなすばらしさだ。こういうスポットライトじみた「光」の使い方は、日本人ばなれした画風を持つ名人・北斎にも、ほとんど見られない。しかも、『吉原格子先の図』では、提灯の一部に「応」と「為」の文字を入れ、さりげなく自分の作品であることを表明している。こういうだまし絵みたいな趣向も、おもしろい。
江戸期は、たしかに女流の浮世絵作家は少なかったらしいし、記録も伝わっていない。だが、父親の影に隠れて絵を描いた阿栄に価値を見出したオランダ民族学博物館では、同館で所蔵する肉筆浮世絵を再調査し、阿栄の作品と推定できる作品を何点も探し出した。それも拝見したが、女性の描き方がほんとうに丁寧なのだ。阿栄の絵を、もっと見たい。もっと知りたい。番組作りに参加して、心からそう思った。
このところ仕事に追われ、徹夜の毎日だが、もはや老人なので深夜に眠り込むことが多くなった。意識を保つためには、ひたすら食べるしかない。毎晩、チョコレート三枚、ラーメン一杯は、軽く消費する。おかげで、毎月1キロずつ体重がふえており、医者の食事指導を受けるハメになった。以来、ご飯はお茶漬け一杯にしているが、飽きる。
ところが最近、かんたんに作れる極上の炊き込みご飯の素を発見した。かつおぶしの老舗にんべんから出ている冷凍食品の「海鮮炊き込みご飯の素」シリーズだ。お米二合に、凍ったままの具材と調味液をいれ、炊飯するだけ。具は豪華な鯛、かに、ほたての3種類がある。これに、ごぼうを合わせてあり、炊きたてを食べると、まるで京都の料亭に行ったような、リッチな気分になる。1袋分を1日3回に分けて食べれば、カロリーは最大でも鯛の329キロ。お気に入りの具は、「かに」かな。

(2010.02.08)
荒俣 宏 (あらまた・ひろし)
1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。2010年名古屋開府400年記念事業ゼネラルプロデューサー。

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