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義父が老人ホームを探すことになった。肺が悪いので、いつも酸素発生機が必要なのと、義母がすでに亡くなっているから子どもたちに面倒をかけたくない、というのが理由であった。それまで同居していた息子が近くにいるほうが安心だから、自宅近くの施設を探すことになった。条件は、まず介護サービスの十分な施設、次が入居にかかる費用、その次に暮らしやすさ、の順である。
しかし、なかなか条件に合うところがみつからない。われわれ家族は、このあたりでいいんじゃないか、と思っても、当人はなかなかウンといわない。部屋の温度設定や、空調の向き、窓の配置、部屋のかたちなど、思いもかけないことでオーケーが出ないのだ。結局、四個所あたってダメ、五個所目でようやく体験入居してみようか、といってくれた。しかし、入居してみると、新入りの出身校やキャリアを聞いてランキングする居住者がいたり、部屋に押しかけて根掘り葉掘り身上調査を受けたりと気が休まらず、契約に至らなかった。六軒目はすこし高価な施設を見に行って契約したが、ヘルパーさんたちと気が合わず、六カ月で退去するハメになった。
本人は終の住処にするのだから、簡単に妥協ができない。しかし、その間に病状が進行した。最後に選んだのは、自宅に通ってきていた訪問看護士さんが就職した施設だった。気心が知れている人の看護が受けられるので落ち着き、得意の油絵をたくさん描いた。
そして入居して一年半ののち、義父は亡くなった。最後の力を振り絞って探し出した施設で過ごした日々は、幸せだったようだ。わたしたちは、残された絵を額装し、もらってくれる知り合いに贈る手配をしている。
超大物司会者にこっそり教えてもらった美味しいひものが食べられる店、麻布十番「あん梅」。凝り性の御主人が、最高級の魚と天然塩をつかって天日で干している。刺身でも食べられる新鮮な魚、しかも釣りものだけを、麻布十番の自社ビルの屋上で干す。魚と塩と水以外の添加物は一切使わない。少し高いけれど、金目鯛のひものがおすすめ。

(2009.10.13)
荒俣 宏 (あらまた・ひろし)
1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。2010年名古屋開府400年記念事業ゼネラルプロデューサー。

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