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「どらく編集委員」通信

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ダ・ヴィンチを極める どらく編集委員 荒俣 宏さん

ダ・ヴィンチコードが世界を席巻したことは記憶に新しいけれど、あれはあくまでもフィクションである。ところが、本物のダヴィンチの暗号を見つけてしまった人がいる。

美術解析学者のマウリッツィオ・セラチーニ博士は30年前、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿の広間を調査中、「五百人広間」を飾るヴァザーリの壁画の中に『CERCA TROVA』(探せよ、さらば見つからん)と書かれた小さな旗を見つけた。それは、500年前に失われたはずのダ・ヴィンチの巨大壁画「アンギアリの戦い」が、まさにここにあるという暗号であった。市当局の許可を受けた博士は、X線やレーダーなどの科学技術を駆使し、ヴァザーリの壁画を損傷することなく、その壁画の後ろに2cmほどのすき間があることを確認。さらに「アンギアリの戦い」の絵の輪郭や、絵の具の色まで解析している。

1505年、ちょうどモナリザと同時期、53歳のダヴィンチは壁画制作に取り掛かった。ミラノ公国との戦いを制したフィレンツェ軍勝利の壁画をという依頼を受け、ダ・ヴィンチはわざわざ現地に出かけて取材している。完成すれば「最後の晩餐」以上の大壁画になるはずだったが、「軍旗の争奪戦」というシーンをほぼ完成したとき、新しい絵の具を定着させるため、たいまつの熱で乾燥させるという実験を試みて失敗。絵の具が溶け出して回復不能なダメージを受けたため、ダ・ヴィンチは続行を断念、フィレンツェを去ったといわれている。

60年後、建築家で画家のジョルジョ・ヴァザーリがこの部屋の大改築を行った際、ダ・ヴィンチの傑作は消失したものとされてきた。ところがダ・ヴィンチ崇拝者であった彼は、改修にあたり、時の権力者たちの目を欺き、その作品を傷つけることなく自分の絵「マルチャーノの戦い」の下に隠したのだ。しかも、緑旗の一枚に謎の言葉を残したことは、ダ・ヴィンチの絵が旗の争奪シーンだったこととも符号する。

現在、セラチーニ博士はイタリア文化省、フィレンツェ市、カリフォルニア大学サンディエゴ校と共同で調査を行っているが、最終的には、ヴァザーリの壁画を外し、ダ・ヴィンチの壁画を取り出すことも考えているという。調査結果はこの秋に発表される予定だ。

ちなみに4月29日(火)午後7時から日本テレビでこれについての特別番組が放送される。特に最後の30分は必見です。

(2008.04.28)

荒俣 宏

プロフィール

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)

1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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