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「どらく編集委員」通信

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極めつけ、に出会えるまで どらく編集委員 荒俣 宏さん

極める、という営みは、「千人斬り」に似ている。いや、エッチな話ではない。弁慶が京の五条大橋に出没して、千本の刀を集めようとした話のような、満願成就までは罪深い鬼になることも辞さない人々の、はた迷惑といえなくもない一途な営みのことだ。しかも、満願成就の証となるのは、なかなか達成できない数や量をクリアーすること。ただひたすら数を集めているうちに、そのばかばかしく膨大な数が、ある日とつぜん「質」に変わる。わかった! と悟りをひらくのは、千人とか一万個とか、区切りのいい大数がそろった瞬間なのだ。

2004年4月から一年間、朝日新聞be土曜版「こだわり会館」で、そんな千人斬りの人たちを見てきた。7年間、エレベーターの歴史と謎を調べつづけ200台以上の実物にあたった普通の会社員。昨今騒ぎになっているエレベーター事故で、いかにこの機械が謎だらけかわかってきたが、それをずっと前から追っていた。20年以上も世界の古いゲームを調べつづける小学校の先生。テレビも新聞も読まないで、失われたゲームの発掘に専心する。花札だけでも200種もの遊び方がある。この人が亡くなったら永久に遊び方が分からなくなるゲームが、たくさんある。50年間、号外を集めつづけるコレクター。彰義隊が官軍に負けたとき、日本初の号外が出た。すでに2万枚を超えた。夢は号外資料館の建設だ。すごい、の一言である。

もっともっと、千人斬りをめざす現代の弁慶を知りたい。極める人の「極めつけ」に出会えるまで。

(2006.06.26)

荒俣 宏

プロフィール

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)

1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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