
「食に命を懸ける会」という、極めた人たちばかりズラリとそろった会がある。メンバーをおいおい紹介していくけれども、まずは、名誉会長のすごさには脱帽せざるをえない。
名誉会長はT京農大の小泉T夫教授といい、カビと臭いものを研究する味覚人である。教授は、美味しいものを百倍も美味しそうに表現する「食べっぷり」文章の大家であるが、それをさらに数値化して止めをさす名人でもある。たとえば、信州松本のぶどうをお送りすると、「ぶどう一粒の皮に150万匹の野生酵母がいます。頂戴したぶどう10房を数えましたら1832粒。実に63億匹の酵母です。私は地球の人口と同数の命を胃袋に収めようとしています」
また、ロシアから決死の思いでキャビアをお送りしたら、「キャビア1gに137粒でした。全量113gなので、1日1粒食べていくと15481日楽しめます。食べ終えたとき私は42歳ふえて101歳です。こんなにたくさん有難う」
あまりにすごいので、教授にお送りできる「粒もの」を、いつも探している。
(2006.07.31)

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)
1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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