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「どらく編集委員」通信

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寿三郎さんの人形 どらく編集委員 荒俣 宏さん

東京・人形町にある「ジュサブロー館」をときどき覗(のぞ)くと、一階の仕事場で辻村寿三郎さんが人形を作ってらっしゃるお姿に、ときどき出会える。人形作りを一生の仕事と決めてから、人形座の本拠だった人形町結城座の跡地とされる場所に落ち着かれるまでの波乱のお話を聞き、人形を拝見する。やって来る一般のお客様とおしゃべりされながら、すいすいと仕事をすすめられる手わざに見とれる。

先日、寿三郎さんが小、中学校時代をすごされた広島県三次(みしま)に出かけて、人形の舞いを拝見した。運命のいたずらで原爆に遭わずに済んだこと、まるで「たけくらべ」の世界に還(かえ)ったような廓(くるわ)があった街のたたずまい、そして闇と霧の深さ、そういう昔話をされた寿三郎さんが、粋な江戸女の人形をイナバウアーのようにのけぞらせ、切なく震わせると、会場が沸いた。やっぱり、すごい。今のような、別の意味の闇が覆う時代だから、「切なさ」というこわれやすい感性が、新鮮だった。天は、然るべき人に然(しか)るべき仕事を極めさせるものだなぁ、と思った。

(2006.09.25)

荒俣 宏

プロフィール

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)

1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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