
わたしはサラリーマンを10年経験したので、作家になってからも朝から夜まで働くことが苦にならず、気がつくと300冊も本を出していた。めざすはひと月に1冊生産、でもそこまでは不可能なのだが、ほんとにそのペースで本を書く人に出会った。
中谷彰宏さんはビジネスや生き方のヒントに関する本を書く人気作家だが、あるとき著書をいただいたのをキッカケに、書店で気をつけてみると、ほんとに毎月1冊、多いときは2冊出版されているではないか。呆(あき)れるほどのハイペースなのだが、本の内容にいつもその秘訣(ひけつ)がはっきり書かれてある。
とくに秀逸な文章を紹介しよう。「夢を実現するための参考書はありません。でも、あらゆることが参考書になるのです」と。中谷さんは、あるテーマを与えられたら「それにかかわる本」と「無関係な本」の両方を読む人がチャンスをつかむ、と言い切る。それって、わたしのやり方と同じだ。ヒントは案外「外」にある。「外」があれば、行き詰まりがなくなり、長続きする。歳とっても投げ続ける投手が、ストライクだけでなくボール球をうまく使うのと同じだ。極めることは長続きすること、これ、真理である。
(2007.01.29)

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)
1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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