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「どらく編集委員」通信

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菊を極める どらく編集委員 荒俣 宏さん

この秋は菊の栽培について話を聞く機会が多かった。11月15日には、新宿御苑で開かれている「菊花壇展」を見物に出かけたが、皇室ゆかりの菊のものすごさに腰を抜かしてしまった。

菊が皇室の紋章に定められた明治元年以来、パレスガーデンだった赤坂離宮内で菊づくりが始まり、明治37年からは新宿御苑での栽培も始まった。それにともない、観菊会が盛んに行われ、多くの驚くべき品種も作成されるのだが、なんといっても圧巻なのは、「大作り」と呼ばれる菊だろう。俗に「千輪咲き」とも呼ばれ、一本の茎から最大で二千もの花が咲く。普通1色だが、たくさんの色の花を継いだものもあったといわれる。明治17年ごろから作出されだしたのだそうだ。

花の付きのよい大菊を用いて、摘芯を繰り返しながら芽を増やし、まるで花笠のような形状にする。これがまた尋常ではなく、主としてこの新宿御苑で独自の発展をとげた。1900年パリ万博には大作りが展示され、世界を驚かせた。最低でも数百ある花を幾何学的に配置し、そのうえ一斉に咲かせなければならないので、ほとんど神業といえる。まさしく名人芸としかいいようがないから、植物の育成と品種作りのわざを「園芸」と呼ぶのも、しごく当然だろう。芸とは、だれも真似られないわざのことだからだ。

大作り花壇は、伝統的な上屋に飾られていた。野外の花壇ではなく、鉢植えが室内に置かれている。見物客が野外にいて、菊は屋根の下だ。こういう花の見せかたは、日本だけではないだろうか。私はただただ感心しながら、大作りの菊を見てまわった。

(2007.11.26)

荒俣 宏

プロフィール

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)

1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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