

正月休みにトルコへ出かけた。団体旅行のお約束で行った絨毯(じゅうたん)工場で糸の染め方や織り方など説明してくれたのは、日本で性風俗店を「トルコ風呂」と呼ぶことに抗議し、改称に成功したヌスレット・サンジャクリ氏だ。今はカイセリの大学で日本語を教えているそうだ。現在トルコ絨毯は価格の安定と、織手が悪徳業者に騙(だま)されないよう、役所が原産地証明をつけて委託販売していると言う。
「魔法のじゅうたん」があるというのでつい興味を示したらすっかりマークされてしまった。どう見ても一枚の絨毯なのに、表と裏がまったく違う柄で織り上げられている。ヘレケの王族に献上されていたもので、たった一つの家族にしか受け継がれていない技術だと言う。秘密が外に漏れるのを恐れ、代々長男の嫁にだけ技術の伝承が行われている。
この技術により、世界で絨毯と呼べる芸術品は、トルコとペルシャの産品だけで、あとはたんなる敷物だという。
あー、高い買い物しちゃったけど、トルコの絨毯を極めた気分になった。
(2008.01.28)

荒俣 宏 (あらまた・ひろし)
1947年生まれ。慶応大法学部卒。博物学者であり、小説家・翻訳家。「世界大博物図鑑 第2巻 魚類」でサントリー学芸賞。ビブロマニア(書籍蒐集マニア)としても有名。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」の解説を務めた。

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