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主婦が2人以上集まれば、必ず夫の愚痴になる。糖が出たとか、メタボだとか、仕事が忙しすぎるとか。私の場合はいつも、「全く家事をしてくれない」が訴えのナンバーワンに君臨する。炊事、洗濯、掃除、もちろんごみ捨てもしない。口を酸っぱくして言ったらやっと食器のあと片付けをするようになっただけで快挙と思ってしまう。ハードルが低すぎるというものだ。
そんな様子をトーク番組などでついついしゃべってしまうのだが、それを見た夫はさすがにばつの悪さを感じているらしい。また、外国人や海外暮らしが長い友人がお客様として来たときには、「当然ホストたる夫がもてなしてくれるよね」という無言のプレッシャーを受け取るのか、いつもの横柄さをうまく隠すようになった。
徐々にではあるが変わりつつある夫にもう一声、愛のむちを、と画策したわけでもないが、先日私が体調を崩してしばらく安静にしていなければならなくなった。さあどうするか、と見ていたら、なんと、まめまめしく厨房に立つではないか! そういえば、「学生の頃イタリアンレストランでバイトして、料理はプロ並みの腕前」という自慢をきいたことはあったが、きっとでまかせだろうと思っていた。結婚8年目にして初めてその腕前を見られることになるなんて。
その料理というのが、いかにも「男の料理」なのだ。冷蔵庫にあるものを適当に要領よくの「主婦料理」とは違う。スーパーで大量に食材を買い付けてきて、見たこともない長いレシートとともにご帰還。みそ汁一つ作るにしてもにぼしを大量に使ってだしをとっている。「さっぱり食べやすいもの」とリクエストしたら、これまた大量の練り物が入ったおでんが出来あがった。「そろそろ洋食でも」というときには、お高いすじ肉を買ってきて、2日間かけてぐつぐつ煮込んでいるではないか。しかしこれが、ドライトマトの酸味がほどよく効いていてうまいのだ。
「やればできるんだ」とは口に出して言わず、「おいしい!」と満面の笑みでほお張っている。微妙に後片付けが中途半端だったり、コンロの周りに噴きこぼれがあったりはするが、そこまで追求するのは次の段階と、指摘するのはよしている。いや、本当に今回はびっくりした。こんなことならもっと早く倒れてみるんだったと後悔しているくらいだ。それとも、最初のハードルがあまりに低かったから、かなりレベルが上がったものと思わせられているのか。もしかしたら、これもかねての夫の戦略だったのだろうか。
肉食系男子たちが大挙してやってくる時や、私が作る時間がないときなどは、こちらの鳥を用意しておくと、手間いらずで、そして喜ばれる。ねぎまやレバーはもちろん、首肉の「せせり」やお尻の「ぼんじり」など、お店に行かないと味わえない部位も、新鮮なまま届く。「つくね」がまた絶品で、かなりジューシーなので、網では焼けないほど。フライパンで焼くほうが簡単だ。
突然の来客で、前日に連絡して「明日午後に届くように送ってください」という無理な注文にも応えていただいたときには、感激した。本当は教えたくないお取り寄せなのだが。どうか皆さん、あまり広めないで。

(2010.03.29)
八塩 圭子(やしお・けいこ)
テレビ東京アナウンサーとして「出没!アド街ック天国」などを担当後、2003年からフリー。テレビ出演のほか、J-WAVE「Jam the World」(水曜20時)ナビゲーターや、連載執筆など、活動を広げている。09年4月から学習院大学経済学部特別客員教授。趣味はオペラ鑑賞、お酒(利酒師)、犬など。
八塩圭子さんのオフィシャルWEBサイトはこちらhttp://www.keikoyashio.com/

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