
私はシンクタンク研究員の仕事で、これまで多くの高齢者の方々とお話しをしてきました。そのなかで痛感したことは、定年後の幸福を決めるのは、お金よりも、生涯を通じてやることを持っているかどうかだということでした。何でも構いません。自分が生き甲斐(がい)を感じて、自分を必要としてくれる場を持つことが、幸せな定年後を迎えるために必要なのです。私は、たくさんやることを持っていますが、一番大きいのはB級グッズのコレクションです。ミニカー、グリコのおまけ、指人形、すごろく、コーラやお茶の空き缶、消費者金融のティッシュなど、いま私が集めているグッズは40種類以上にのぼります。大した価値を持つものではありませんし、他人に自慢できるものでもありません。ただ、何に美しさを見いだし、それをどのように整理するのかというのは、コレクターの感性の表現です。だから人から何と言われようと、自分の感性に従って集める行為自体がとても楽しいのです。
それだけではありません。私がB級グッズを集めていて、よかったなと思うのは、気のおけない仲間が増えたことです。自分のコレクションをインターネットで公開しているだけで、同じものを集めている人からメールが来ます。メールのやり取りをしているうちに、一度会いましょうということになり、会いに行くと、すぐに何十年来の友人のように仲良くなれます。同じものに愛着を感じるということは、同じ感性を持ち合わせているからだということもありますが、お互いの悩みも共通しているからです。以前、ネットで知り合った空き缶コレクターに初めて会った時も、すぐに仲良くなりました。そのきっかけは、世間が「燃えないゴミを集めて何をするの」と、缶コレクションにまったく無理解であることに、二人とも大きな不満を持っていることでした。
(2006.10.30)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。