
団塊の世代の定年退職が今年から始まり、彼らに支払われる80兆円とも言われる退職金をさまざまな業界が虎視眈々(こしたんたん)と狙っています。しかし、団塊の世代の立場から考えれば、そう簡単に退職金を使ってしまうわけにはいきません。老後の生活不安に対応するための大切な資金だからです。私自身は、せっかくのまとまった資金ですから、起業や移住や留学など、まとまったお金が必要なことに使うのが一つの有効活用策だと思うのですが、公的年金の先行きが不透明ななか、少しずつ取り崩して生活費にあてていきたいという気持ちも分かります。
その場合、退職金をどう運用するのかという問題がでてきます。預貯金で持っているのが一番安全ですが、何歳まで生き残るか分からないため、どんなペースで取り崩したらよいか迷いますし、預貯金は利回りもけっして高くありません。
そこで最近急速に残高を増やしているのが変額年金保険です。生命保険会社が販売する普通の個人年金と比べて、年金給付の額が確定していないのが特徴です。掛け金を投資信託で運用するのが一般的で、運用が上手く行けば年金が大きく増えますが、運用に失敗すれば少なくなってしまうのです。
私は老後生活に余裕のない人に変額年金はお勧めしません。リスクを取りに行って失敗し、みじめな老後生活を送るのは忍びないからです。ただ、ある程度の生活費が確保されていて、失敗しても大丈夫という人にはお勧めです。リスクを取らないと高い利回りはとれないからです。
リスクは取れないけれど利回りも欲しいという人のために、最近は元本保証や最低支払い保証つきの変額年金保険というのも売り出されています。これなら、あまり老後に余裕のない人でも大丈夫でしょう。もちろん元本保証のない変額年金と比べると、大幅に利回りが落ちるのですが、それは仕方がありません。残念ながら、お金持ちほど利回りが高くなるというのは老後にも通用する「お金の基本原理」だからです。
(2007.01.29)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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