
最近気になっている言葉があります。トカイナカという言葉です。都会と田舎の中間地域を指すのですが、大体都心から2時間程度離れた郊外に暮らすライフスタイルのことを「トカイナカ暮らし」と呼んでいます。
定年後に田舎に移住したいと思っている人はたくさんいます。かくいう私も沖縄暮らしをずっと考えてきました。ただ、田舎暮らしには相当厳しい制約があります。働き口がありませんし、買い物や病院に通うのも不便です。文化的な刺激も少ないですし、近所づきあいも大変です。それと比べると、完全な田舎暮らしとは行かなくても、都心からやや離れた近郊に住む、すなわちトカイナカ暮らしをすることで、田舎暮らしに近いゆったりとしたライフスタイルを採ることができます。
私はいま早朝のラジオ番組をやっているため、平日は都心のホテルに泊まり、週末に埼玉・所沢の自宅に帰る生活を続けています。週末に所沢に帰ってくると、空気がまったく違います。星の数も違いますし、空気がすき通っているのです。家庭菜園もできますし、何より東京に出かけたい時には、1時間半の時間と往復千円程度の電車賃をかければ、いつでも行くことができます。通勤が大変なのが玉にきずですが、定年後だったら問題はないでしょう。しかも住宅価格は安いですし、何よりも物価が安いので暮らしが楽になります。もちろん、いまは交通機関が発達しているので、私の住んでいるところよりも、ずっと本格的な「田舎」が都心から2時間の距離で楽しめます。
普段はトカイナカで暮らして、たまに本格的な田舎に旅行で行ったり、別荘を持つというのが、案外最も現実的な定年後の住まい方なのではないかという気が、最近しています。もちろん、都心と田舎の二重生活というのもよいのですが、さすがにそれはお金がかかりすぎてしまうので、お金持ち以外はむずかしいでしょう。
(2007.04.23)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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