
定年後は、お金の確保以上に、「やること」の確保が重要になる。私はそう言い続けてきました。それに対していつも提起される批判は「そんなことを言われても、やりたいことがみつからない」というものです。
私はコレクションしているグッズだけで50種類もありますし、カメラマンも、寓話作家も、ネット玩具店も、博物館も、とにかくやりたいことだらけです。そして、実際、もう手をつけています。だから、なぜやりたいことがみつからないのか、なかなか理解できなかったのですが、最近分かってきたのは、やりたいことがみつからないのは、単にきっかけがないだけではないのかということです。
とりあえず、何かをやってみる。そうすると、楽しみ方というのが分かってくる。もし違っていたら別のものにチャレンジすればよい。だから、やりたいことがみつからない人には、第一歩を踏み出すのを助けてあげるだけでよいということになります。そして、そうした手助けが、最近は盛んに行われるようになっています。
例えば、ディープなファンが多い鉄道模型です。NHKで「趣味悠々・選 ようこそ!鉄道模型の世界へ・レイアウト制作入門」と題する番組がありました。三波豊和さんが生徒役になって、諸星昭弘さんの指導を受けながら、鉄道模型レイアウトの制作を体験していくという内容です。
もう一つ、講談社が『昭和の「鉄道模型」をつくる』という週刊雑誌を創刊しました。毎週、雑誌に同梱されたパーツを組み上げていくと、50週で45センチ×60センチにレイアウトされた昭和の街並みのジオラマと、そのなかを走るNゲージの鉄道模型が完成するという仕掛けです。街並みを昭和にしたのは、明らかに中高年男性を狙いにしたものです。鉄道模型ファンが、全国に約10万人と言われるなか、この雑誌の創刊号は13万部も売れました。鉄道模型ファンの裾野が大きく広がったのです。
スタートは、こんなものからでよいのだと思います。ちなみに、私は鉄道模型を、ほとんどやってこなかったので、いまこのジオラマを作り始めています。
(2007.08.27)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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