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「どらく編集委員」通信

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高齢期の恋愛を考える(つづき) どらく編集委員 森永卓郎さん

前回、このテーマで書いたところ、私のメールアドレスにいくつも賛否両論のご意見をいただきました。そこで、調子に乗って、もう一度このテーマで書きたいと思います。

以前、特別養護老人ホームの職員の方から、こんな話を聞いたことがあります。ある日、60歳台の若い男性が入所してきたそうです。その施設は女性ばかりで、男性がもともと少なかった上に、入所してきた男性はとてもダンディで格好良かったそうです。ある日の朝、職員が巡回で男性のベッドを訪れると、その周りに寝たきりのはずの女性が何人も寝転がっていたそうです。

棺桶に入るまで、男は男だし、女は女なのです。科学的根拠があるわけではないのですが、私の見る限り、恋をしている人は、いつまでも生き生きとして、元気です。

そんなことを言ったって、高齢期に入ってからも恋愛を続けられるほど、自分は美しくないと思っておられる方も多いでしょう。

そうした方は是非、高階秀爾氏の書いた「世紀末の美神たち」(集英社)という本を読んでください。19世紀末に活躍した芸術家たちにインスピレーションを与えた美しい女性たちの物語なのですが、そのなかの「ベルエポックの恋人」と題されたミシア・ゴデブスカのエピソードは感動的です。

ルノワール、ロートレック、ボナールなど、多くの芸術家がミシアに夢中になり、彼女からのインスピレーションで作品を描いています。ルノワールは何枚もミシアの絵を描いていますが、すべて着衣です。ルノワールはミシアのヌードを描きたいと懇願したそうですが、ミシアは最後まで許しませんでした。それでも、ルノワール、ロートレック、ボナールが描いたミシアを見ると、輝くほどの美しさを放っています。それだけの美しさを保ったからでしょうか。78歳のとき、ミシアは彼女に憧れる芸術家たちに囲まれて、静かに息を引き取ります。

ミシアは1950年まで生きましたから、写真が残されています。その写真に映し出されたミシアは、私には、たまねぎオバサンにしかみえないのです。ルノワール、ロートレック、ボナールは、ミシアの事実を絵にしたのではなく、彼らの心に映った真実を描いていたのです。

そこまではできなくても、誰でもミニ「ミシア・ゴデブスカ」にはなれるのではないでしょうか。みなが恋愛を放棄するより、みなが恋愛をする高齢社会の方が、私はずっと楽しいと思います。

「世紀末の美神たち」は、こちらからご購入いただけます。

(2007.10.29)

森永卓郎

プロフィール

森永 卓郎(もりなが・たくろう)

1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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