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「どらく編集委員」通信

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介護の費用はなぜこんなに違うのか どらく編集委員 森永卓郎さん

父が脳梗塞で倒れてから1年が経ちます。幸い、思考能力にまったく影響はなかったのですが、半身不随は残ってしまいました。

介護というのは自分の周りで起こってみないと、なかなか実態が分からないものです。正直言って、私は介護保険でかなりの部分が賄われるのだろうと、思っていました。ところが実態は、まるっきり違ったのです。確かにデイサービスは利用できますし、介護保険を利用して色々なものが安く買えます。それで大いに助かっていることは事実ですが、介護保険の制度は、基本的に家族の手に負えない部分を助けるという制度で、大部分は家族がやらなければいけません。要介護者を一人抱えるだけで、家族には大きな負担がかかるのです。わが家では妻に大部分の負担がかかっています。

一度、あまりに負担が大きいので、ケア付きの介護施設を利用することも考えて、資料をみたのですが、驚いたのはそのコストの高さでした。東京だと、入居金だけで1千万円以上、都心だと1億円などというところもあります。しかも、万が一、入居の翌日に死亡しても、入居金の3割は返ってこないというのです。さらに月のコスト負担が20万円から30万円だといいます。結局、あまりの金額の大きさに驚いたのと、本人の希望もあって、とりあえず自宅での介護を続けることになったのですが、ケア付きマンションのコストの高さには、何か割り切れないものを感じていました。

ところが、最近ひょんなことから、佐賀県伊万里市に驚異のケア付きマンションが存在していることを知りました。この施設は、国民年金だけで、つまり5万円から7万円で、家賃から食費まですべてまかなってくれるというのです。しかも個室で、さらに入居金もゼロだというのです。

株式会社創明プロジェクトが運営している「ぽっかぽか・伊万里」と言う施設で、国民年金だけで入れるプランは、本当に困っている人だけのための目玉プランなのだそうです。ただ、現在も募集はしているそうです。

「これから、介護は国民経済の大きな負担になる。だから、消費税の増税は避けられない」。そんな話がよくされています。しかし、現実にこんな低コストで、介護を実現している事例があるのです。だから国は、まず、どうしたら本当に低コストで、高齢者が安心して暮らせる介護施設ができるのかを、こうした事例にもとづいて研究すべきだと思います。

年をとってから、必ずしも都会に住み続ける必要はありません。自然豊かな地方で、低コストで暮らすとためのモデルプランが、日本中で選択肢として提示されれば、老後の不安も、ずっとやわらいていくと思います。

〈備える〉介護が必要になったら

(2007.11.26)

森永卓郎

プロフィール

森永 卓郎(もりなが・たくろう)

1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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