
今年1年は、家計にさまざまな災難が降りかかりました。まずは、定率減税の全廃です。所得税で20%、地方税で10%の減免があったのに、昨年で半分、そして今年から完全になくなりました。そして6月からは、税源譲与に伴う住民税の増税があり、多くのサラリーマンの税率が5%から10%に上がりました。もちろん、所得税の税率が10%から5%に下がってはいるのですが、定率減税撤廃の影響で所得税の減額が小さかったため、6月の給与明細をみて驚いた人が多かったようです。
二つ目の災難は、原油高や穀物高です。ガソリンはもちろんのこと、食用油や菓子、パン、カップラーメンなど様々な生活関連商品の値上げが行われたのです。しかし、消費者物価指数(生鮮食料品を除く)の前年比は、2月から9月までマイナスでした。消費者物価が上がらなかった原因の一つは、デジタル家電などの価格が下落を続けたことです。しかし、より大きな原因は、日本経済のデフレが続いていて、原材料費が上がっても、企業がコスト増を製品価格に転嫁できなかったからです。消費者の所得が減っているのに、値上げなんかしたら、買ってもらえなくなってしまうのです。
デフレを継続させる原因になったのが、第三の災難、2月に行われた日銀による短期金利の引き上げでした。いまから振り返ると、この利上げは明らかな失敗でした。デフレ脱却寸前まできていた日本経済を再びデフレに陥れてしまったからです。株価は低迷し、9月の景気動向指数・先行指数は、ゼロとなりました。採用系列の景気指標すべてが悪化したのですが、これは1991年以来16年ぶりのことです。景気循環の専門家のなかには、「景気はすでに後退過程に突入した」とみる人もでています。
デフレ深刻化を受けて、夏のボーナスは3年ぶりに減少しました。冬のボーナスも減少の見込みです。一方、原材料費の高騰は、10月以降の消費者物価指数の前年比をプラスに転じさせています。値上げを我慢できなくなった企業が、コスト増の一部を製品価格に反映させるようになったのです。日本経済はインフレに突入しました。
賃金が下がるのに、物価が上昇していくという、かつて経験したことのない厳しい家計状況の第一歩を踏み出したのが、2007年でした。
(2007.12.25)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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