
最近、何人もの高齢者の方から、持ち株を全部処分したという話を聞きました。「老後資金の運用先として、株式を保有してきたが、日本経済の先行きに何もよいことが見えない。だから、もう株式はもう保有し続けることができない」というのです。
昨年暮れから株価が大幅に下落し、世界2位だった1人あたりGDPも、18位にまで転落してしまいました。そこに大田弘子経済財政大臣の「日本は経済面でもはや一流ではない」との発言が飛び出したのですから、日本の将来に絶望するのも無理からぬことと思います。大田大臣は、「日本のサービス産業の生産性が低い」ことが日本経済の競争力を低くしていると主張しています。本当にそうでしょうか。
サービス産業の生産性は一人が生産する付加価値で計られます。日本は一人当たりが稼ぐ金額が低いということなのですが、人件費がコストの大部分を占めるサービス産業では、生産性が低いというのは、単に料金が安いということに過ぎないのかもしれないのです。
実際、同じランクで比べると、日本のホテルは欧米より大幅に安いですし、最近ではアジアから物価の安い日本に買い物ツアーが集中しています。こうしたことが起こる原因は円の為替が安すぎるからです。
例えば、アメリカの消費者物価は、この10年間に30.1%上昇しています。一方、日本は1.9%の下落です。つまり、アメリカの物価は日本と比べて、32.7%高くなっているのです。本来なら、その分だけ円高が進まなければいけないのですが、円高はそれほど進みませんでした。10年間の物価上昇率の格差を埋めるためには、1ドル=96円にならないといけないのです。為替がそこまで円高になれば、日本の地位は大きく上昇します。
もうひとつ、日本が過小評価されているのは株価です。アメリカの株式時価総額は、1月18日現在で、名目GDPの1.30倍です。一方、東証の時価総額はマザーズを含めて名目GDPの0.85倍に過ぎません。仮に、日本の株式時価総額のGDP比が、アメリカ並みになるとすれば、株価が53%上昇することになります。日経平均に換算すると、2万1213円の水準です。日本の株価は異常に安いのです。
しかも、海外からみると円レートも割安のわけですから、日本株を買うことは、とても有利なのです。私は、今年中に海外から大きな「日本株買い」の動きがでてくるとみています。
株で利益を出すためには、「安いときに買って、高いときに売る」のが原則なのに、日本の庶民は逆の行動に出がちです。
老後資金の運用は長期にわたります。少なくとも狼狽売りをすることは、収益の機会を失うことにつながる可能性が大きいのです。
(2008.01.28)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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