
4月から後期高齢者医療制度がスタートしました。75歳以上の高齢者は、健康保険から強制的に脱退させられ、後期高齢者だけの独立した医療保険制度に加入することになりました。これまでは、自分の子供が加入している健康保険に被扶養者として加入していれば、お年寄りの健康保険料は事実上無料でした。それが、年金支給額が月1万5千円以上の後期高齢者すべてから年金からの天引きで保険料を徴収することになったのです。
保険料は、都道府県ごとに異なりますが、政府の試算だと平均で月6000円ということになっています。平均で月4000円の介護保険料の負担もありますから、軽減措置がなくなると、毎月1万円程度の保険料が年金から天引きされることになります、しかも、後期高齢者医療保険の保険料は、今後急速に増えていくことが確実視されています。厚生労働省の試算では、2015年度に月6000円から7083円になるとされていますが、そんなレベルではとても済まないという見方も出されています。
しかも、それだけの負担をしても、後期高齢者はいままで通り、医療費の1割を自己負担しなければなりません(現役並み所得者は3割)。1割と言っても高齢者が入院した場合には莫大な医療費がかかりますから、その負担は非常に大きくなります。もちろん、自己負担には毎月4万4400円という負担の上限がありますが、この負担限度額についても、今後大幅な引き上げが予定されています。しかも、現在でも食費と光熱費は保険の対象外で、全額が自己負担になっています。つまり、高齢者が長期入院すると、毎月の負担はいまでも10万円近くなるということです。
少ない年金のなかで、それだけの負担が出来ない人がたくさん出てくるのは、明らかでしょう。保険料負担が高まっていけば、なおさらそうした高齢者が増えていきます。そうした場合、年金で払いきれない医療費は、家族の負担になります。それが続けば、お年よりは、家族の重荷になってしまうのです。
福田首相は、後期高齢者医療制度を「長寿医療制度」と呼び直すと決めましたが、この制度こそ、長寿を喜べなくする元凶だと言ってよいと、私は思います。
老後に家族に邪魔にされないためには、老後を迎える前に十分な貯蓄をもっておくことしか、対策がありません。しかし、老後にそなえてひたすら貯金することは、決して豊かな人生とは言えないのではないでしょうか。
(2008.04.28)

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社(現日本たばこ産業)、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

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