住宅購入の頭金や生活費、年金の掛け金――。子どもが成人した後も、親がそうした費用を出すという話をよく耳にします。親はどこまで金銭支援をするものなのでしょうか。
出版社に勤める女性(33)は最近、さいたま市内の実家近くに団地の一室を購入し、夫と引っ越した。今月に初めての子どもが産まれるので、育児に両親の手を借りるためだ。団地の購入とリフォーム費用は計約1800万円。頭金150万円は親が出してくれた。残りはローンで返済する。
金銭援助はこれが初めてではない。大学時代の友人だった夫との結婚は3年前。結婚式の費用約700万円のうち、出席者のご祝儀で賄えなかった約300万円は両親持ち。新生活での冷蔵庫や洗濯機などの家電製品(計約50万円)も買ってもらった。
父(69)は教員、母(64)は司書として働いてきて、現在は年金暮らし。
母親は「家電製品は花嫁道具のつもり。住宅購入の頭金も周りに聞くとみんな出してあげている。子どもには甘いと思いますが、子どもに(お金を)かけるのは惜しくないですよね」。
女性と夫の世帯年収は約800万円。貯蓄は特にしてこなかった。「いろんな費用を出してもらってラッキー」。女性は笑った。
一方、静岡県三島市の女性(41)は「援助がないと生活できない」と語る。夫(40)と一緒に宅配業のパートをしているが、短時間契約で収入は伸びず、年収は夫婦で二百数十万円だ。
自分と夫の携帯電話2台分の代金は、家族割契約で夫の親が支払う。ガソリン代や食料費の一部は夫がクレジットカードで払っているが、引き落とし先の預金通帳は夫の母が管理し、毎月約8万円を振り込んでくれる。女性は「働きたい人がたくさんいて仕事が回ってこない。自立したいけれど無理」とため息をつく。
家計経済研究所が2008年に25〜35歳だった女性を対象にした調査では、結婚世帯の約4分の1が親から金銭的な援助を受けていた。毎月の援助額は、妻の親からもらっている場合は3.1万円、夫の親からは4.3万円、両方の親からもらっている場合は4.6万円だった。
援助する側の親世代からは、自分と子どもの将来を不安に思う声も上がる。
東京都世田谷区の公務員中沢幸枝さんは、長男(26)と専門学校生の次男(19)の3人暮らし。約3年前からフリーライターをしている長男の収入は不安定で、中沢さんが国民年金の掛け金を払ってきた。
それを、定年退職を機に昨年4月から、毎月の掛け金約1万5千円を長男に払わせるようにした。
「独立して生活するのは無理だろうな」と思う一方で、家賃や食費を家に入れるわけでもなく、年金の掛け金の支払いも親がかりの長男に、「なぜここまでの面倒をみないといけないのか」との気持ちになったからだという。
幸い、定年退職後も公務員に再任用され、働き続けている。だが、いつかは年金生活になる。「お母さんはいつまでも生きているわけじゃないんだよ」。長男にそう言ったこともある。
「家計の見直し相談センター」(東京)のファイナンシャルプランナー藤川太さんは、「親子間の経済格差が、親世代と子世代の『連結家計』を生んでいる」と指摘する。
親世代は高度成長期の右肩上がりの時期に財産を築いてきた、比較的余裕のある世代。一方、現在の20〜30代は、就職してから不況続きで収入は低いまま。だが、「結婚して子どもを育て、車や家を買う」という親世代の人生を見て育った子世代は、自分たちも同様の人生を歩もうとし、親世代も子世代に、そうした生活を実現させてあげたいと願うのだという。
ところが子どもの経済力が追いつかず、目標に手が届かない。そこで、親が子どもを金銭的に援助する「連結家計」が生まれる、というわけだ。
注意が必要なのは「連結破綻(はたん)」。親が援助できなくなると、子どもと共倒れになってしまう。「もらう方は頼りすぎない。あげる方もコントロールしながらあげる。それが連結破綻を防ぐ道です」と、藤川さんはいう。
(沼田千賀子)
(更新日:2010年05月06日)
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