人生の大きな節目となる「出産」。ライフスタイルが多様化した今、子どもを持つことへの意識やその時期も、人それぞれです。現代の出産を取りまく事情と、心模様に迫ります。
「産みどきと年齢を考えて、この妊娠にたどり着きました」。7月初旬予定の初産への思いを、千葉県の女性(35)は明かす。
短大卒業後、東京都内の飲食関係の会社に営業職の正社員で入社し、10年目に結婚した。31歳。友人などに子どもができ、なんとなく出産を意識し始めた。
33歳の2008年春、上司の男性部長に宣言した。「今年1年は、子作りを頑張りたいです」。自分の後任探しや、つわりや切迫流産で辞めた後輩たちを見てきて、「先に宣言した方が良いと思ったんです」。
だが、1年たっても授からず、年齢を考えて昨年から不妊治療を始めた。
仕事の合間に通えるよう会社近くのクリニックを選び、上司や同僚にも治療の日を伝えて、遅刻や早退、休みへの理解を求めた。
治療を始めた時、「そこまでしなくてもいいんじゃないですか」と、子どものいる部下の男性から言われたことがあった。「でも、治療は半端な気持ちではできない。薬の副作用で仕事に影響が出る可能性もあります。治療を隠し、後ろめたい気持ちで遅刻や早退をするのは、かえってストレスになる気がしました」
費用面から体外受精は3回までと決めていたが、初回で妊娠。だが、切迫流産になり、2カ月間仕事を休んだ。不妊治療中の昨年、課長代理に昇進。来春には復職するつもりだ。
部下の女性から妊娠の報告を受ける時、多くが「すみません」と、泣きながら言う。子どもは欲しいけれど仕事も続けたい、どうしたらいいのか、と。
「働く女性の妊娠は大変。社内である程度の信頼関係を築き、希望を言えるようになった今が産みどきかなと、私の場合はそう思いました」
働く女性の増加とともに、女性の晩婚・晩産化が進んでいる。厚生労働省の調査によると、女性の平均初婚年齢は1975年の24.7歳から08年は28.5歳に。第1子出産の平均年齢も25.7歳から29.5歳に上がった=グラフ。
ただ、生き方は多様化しても、女性の体自体はそう変わってはいない。「変化に対応できず、様々な不調が起きています」。ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック院長で産婦人科医の対馬ルリ子さんは指摘する。
長寿化と出産回数の減少で、現代の女性は閉経までに約450回もの月経を経験するといわれる。子宮や卵巣に負担がかかり、子宮内膜症や子宮体がん、卵巣がんなどのリスクが高まっているという。過度なダイエットやストレスも月経不順や無月経の原因になる。
「女性の体には『季節』があります。出産のトラブルが少ない年齢は20〜35歳くらいまで。見た目のアンチエージングだけでなく、内面の健康にも目を向けて」と対馬さんは話す。
20〜35歳という、体からみた「出産の季節」にも、お産に積極的でない人が目立つ。ベネッセ次世代育成研究所の調査で「子どもは欲しいですか」との問いに、「いてもいなくてもよい」「欲しくない」「考えていない」と答えた女性が、20代後半で25%、30代前半で35%に上った。
「私たちは、あえて産まない選択をしました」。札幌市の主婦(45)は語る。
理由は、夫に好きな建築関係の仕事を思い切りしてほしかったことと、お互いに子どもが苦手だと思っていたからだ。
「収入も、育てる覚悟もないまま高齢出産になる35歳を迎えた時は、『女性としてこのままで良いのか』と悩みました。でも、夫の転勤も重なり、それどころではなくなって」。数年前から体調を崩し、医師からは妊娠は難しいと言われた。「でも、後悔はしていません」と主婦はいう。
今の夢は銀婚式にもう一度、式を挙げること。そして、生活に余裕ができたら里親として、途上国の子どもたちを育む寄付をしようと、夫と話し合っている。
「この先も夫と仲良く生きていければいい。今は心からそう思えます」
(前田育穂)
(更新日:2010年07月05日)
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