7月から始めた「出産」のシリーズに、読者から約320通の声が寄せられました。お便りを通して改めて、「子どもを産む」ということを考えます。
この4カ月間、若いママから高齢出産者まで様々な世代の出産の現状を伝えてきた。働くことと産むことの間で悩む姿が多かった。すでに、共働き世帯が専業主婦世帯を上回っている日本だが、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現には、まだまだ課題がある。
大学の非常勤講師として働く東京都の女性(40)は、2人の子どもの出産を、職場には一切言わずに通した。非常勤という弱い立場。勤務先の大学は、カリキュラム再編という名目で多数の非常勤講師を切っていた。産休や育休を取れば、リストラの対象になるのでは、という不安からだった。
2人とも出産予定日が冬だったので、コートで大きくなったおなかを隠して働き続けた。本来は喜ぶべき出産のはず。それを周囲に隠さなければならないことに複雑な思いがあった。
「どのような働き方であっても、気兼ねなく子どもが産める社会になって欲しい」
出産後の働き方についても、不安や不満は多い。
介護福祉士の女性(32)は昨年、育児休業を終えて職場復帰したところ、相談もないままに、出産前の責任者としての職を解かれ、給料も減額された。子どもの体調が悪い時には有給休暇を取らざるを得ず、それを理由にさらに給料を減らされた。母親であることが、勤務先で不利に取り扱われていると、感じずにはいられなかったという。
神奈川県で医療事務の仕事をする女性(32)は、保育所探しに苦労した。
予定していた勤務先の病院内の保育所に入所できず、育児休業を延長せざるを得なくなった。復帰後の深夜に及ぶ勤務と育児との両立は難しく、正社員から非常勤に変わった。午後6時から会議が設定されることもしばしばで、「保育所への迎えがある人への配慮が足りない」と訴える。
紙面では、育児に参加する「イクメン」も登場した。しかし、イクメンを温かく見守る企業ばかりではない。
埼玉県の会社員の女性(31)は昨年、初めての子を出産後、夫に2週間の育児休業を取ってもらおうとした。会社に申請すると突然、他県への転勤を打診された。結局、夫は転勤を断るとともに、育休取得も断念した。
「親世代にあたる会社の上司には、『家庭は女に任せておけばよい』という意識があると感じました」
「2人目の壁」のつらさを訴える声も多く届いた。
千葉県の主婦(33)は今、3歳の1児の母。年子か2歳差ぐらいで次の子をと思ったが、かなわなかった。周囲のママ友達が着々と2人目を妊娠、出産していく中で、兄弟をつくってあげられない申し訳なさで、精神的に落ち込む日々だった。
子どものいない女性に対して「子どもはまだ?」は禁句になりつつあるが、1人出産していると、「2人目はまだ?」「一人っ子はかわいそうよ」と軽い気持ちで言われることもあり、傷ついた。
最近、インターネット上で、同じような悩みを抱える人が多くいることを知った。「一人っ子でもいいか」と思いながらも、まだ、悩みは続いている。
31歳で1人目を出産した後、3度の流産を経験した女性(40)は、「初めての妊娠が何の問題もなかったので、2人目も望めばできるだろうという程度にしか考えていなかった」と振り返る。高齢になるほど妊娠しづらくなる現実を痛感したという。
すべてをコントロールすることなどできない「産む」という行為。それゆえに、子どもを「つくる」や「産みどき」という言葉に、違和感や反発を感じるという指摘もあった。
流産の経験がある熊本県の図書館指導員の女性(50)は、こうつづる。
「かけがえのない命に対して『つくる』という言い方が、どうしても好きになれません。やはり子どもは『授かりもの』だと思うのです」
(松浦祐子)
(更新日:2010年10月25日)
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