仕事を始める前の時間を有効に活用する「朝活」。アフター5とは違ったつながりが広がっています。
2月下旬、薄暗さの残る東京・JR市ケ谷駅前。
午前7時。カフェの開店と同時に「指定席」の店奥へと人が入っていく。
「久しぶり」「はじめまして」。あいさつを交わし、全員が座り終わると、読書朝食会「Reading-Lab」(通称リーラボ)の始まりだ。
この日は20〜40代の10人が顔を合わせた。2班に分かれ、自己紹介と持参した本を、1人3分以内で語る。本はビジネスから福祉、ウオーキングや禅修行とジャンルはさまざま。
「その本を読んで一番参考になったところは?」
「その筆者は、ほかにどんな本を書いているの?」
紹介後は5分間のディスカッションタイムに移る。
普段はビジネス書を読むことが多いというコンサルタントの市川光生さんは「おもしろい小説や漫画を教えてもらって、読む本の幅が広がった」。大学生の寺田知賀子さんは初参加。「色々な人と出会いたいと思って。多くのことを吸収したい」という。
この数年、出勤前の読書会が盛んになってきた。リーラボも3年前から、インターネットの交流サイト(SNS)のミクシィを通じて情報交換をしながら、都内各所で随時、読書朝食会を開いている。今や約1200人が登録する巨大コミュニティーだ。
「市ケ谷」の会を主宰するNPO職員入谷聡さんは「朝7時に遅れずに来る人は、セルフコントロールができている人たち。だからこそ、つながりがいのある人に多く出会える」。夜の会合との違いを、そう分析する。
参加は出勤前の人ばかりではない。フリーライターの馬場千枝さんは2児の母親で子育て中。「夜の集まりは難しくても、朝なら出て来られるから」
ビジネス街の中心地、東京・丸の内では2009年に、地域の再開発に取り組む企業などが企画委員会をつくり、「丸の内朝大学」を開講した。
講義は主に午前7時半から8時半の1時間。食学部の「ニッポンのお酒探究」、旅学部の「温泉ヒーリング」などユニークな講座が並ぶ。春夏秋の学期ごとに開講し、現在は9学部22講座ある。「卒業生」はすでに2500人を超えた。
その場の交流はもちろん、修了後もつながりをもち続ける人もいる。
会社員の平井圭一さんは09年に環境学部の環境・ソーシャルプロデューサークラスを受講。「より良い社会となるために身近にできる方策」の課題をチーム7人で取り組んだ。
出てきたアイデアは、笑顔のきっかけとなるハイタッチ。うつむきがちな世の中。顔を上げて手をタッチし合うことで街を活気づかせたい――。具体化していこうと講座修了後、「ハイタッチ隊」を結成した。
月1回程度、「朝ハイタッチ」「ハイタッチハイキング」などのイベントを実施。8月1日を勝手に「ハイタッチの日」と定めた。2月末の東京マラソンでは、沿道で応援しながらランナーらとハイタッチ。「一体感が生まれ、たくさんの笑顔に出会えた」
朝活は「婚活」にも活用されている。結婚サービス会社「パートナーエージェント」(東京)は09年から、「朝婚活プログラム」を始めた。朝読書や朝ランニング、朝映画といったプログラムが、「夜のイベントにつきもののお酒が苦手な人や残業が多い人などに好評」という。休日ならばプログラムの後、気の合った人とゆっくり昼の時間を過ごすこともできる。すでに朝婚活から結婚に至ったケースも。今後も月1〜2回は企画する予定だ。
朝活する人のスケジュール管理を目的にした「朝活手帳」(ディスカヴァー21刊)の筆者で、自らも、朝9時までの時間を有効活用しようと「Before9プロジェクト」を運営する池田千恵さんは、早起き仲間同士で「おはよう」とツイッターでつぶやき合うのが最近の日課だ。
「朝は前向きな気分になれる時間帯。一人で、その日の段取りや将来をじっくり考える時間としても有効です」
(松浦祐子)
(更新日:2011年03月07日)
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