私の著書「キッチンガーデンはじめて12ヵ月」や、雑誌などで目にしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが(だとしたらうれしい!)、実は私、知る人ぞ知るトマトマニアなのです。

1999年に初めてタネからトマトを育てて以来、毎年、さまざまな種類のトマトを栽培し続けています。いちばん最初にタネから育てたのは、色も形もレモンにそっくりのワンダーライトと、シマシマ模様のティゲレラという品種でした。もし、ごく一般的な<トマトの苗>(たぶん桃太郎)から育てていたら、マニアにはなっていなかったかもしれません…。
→私が育てたさまざまなトマトのうちのごく一部です。グリーン系はちょっと皮が黄色くなったころが食べごろ。まっ黒トマトでトマトソースを作ると、デミグラスソースのような色に仕上がります。

園芸家の私がトマトにどっぷりはまってしまったワケは、バラエティの豊かさに魅せられたから。まず、なんといっても、色! それまでは赤やピンクのトマトしか知りませんでした。黄色、オレンジはまだ分かるとしても、緑や白、黒もあって、さらにツートンカラーやシマシマ模様まであるとは驚きでした。

そして、形。球型や楕円(だえん)、プラム型、カボチャ型、ピーマン型、イチゴ型、瓢箪(ひょうたん)型、バナナ型などなど…。
←球形や扁平なトマトはおなじみの形。ハート型は、“ファーストトマト”がよく知られています。楕円やプラム型はヨーロッパなどで主力の料理用トマトに多い形です。
大きさも、パチンコ玉ほどしかない小さな原種のマイクロトマトから、ビーフステーキと呼ばれる両手のひらサイズの大きなものまで各種あるのです。





お肌のディテールにしても、桃のようにケバケバしたものもあれば、サクランボのようにピカピカなものもある。果実が違うだけではなく、その育ち方や実の成り方、仕立て方などもさまざまで、葉っぱが切れ長だったり丸かったり、ジャガイモの葉に似ていたり…。今年は、斑入り葉っぱのトマトも育てています。
→房の付き方もいろいろ。シャンデリアやぶどうの房のように見えるものあって、見ているだけでも楽しくなります。

なにしろ、トマトの品種は世界に約8千種もあるといわれます。すべてのタネを手に入れられるわけではありませんが、毎年違う品種を十数種類ずつ育てたとしても、いったい何年かかることやら…。でも、それこそが楽しみのひとつ。見たことのない品種に出会える喜びもあって、好奇心がつきないのです。
このところ、緑や黒のトマトが次第に話題になってきているので、私のようなマニアではなくても、見たことがあるのではないでしょうか。ものめずらしいので、青いバラのように、最新技術によって人工的に品種改良された新品種なのかな? と思うかもしれませんが、むしろその逆。固定種とも呼ばれる、昔ながらの品種の実からタネをとり、同じ実を育てたものです。トマトに限りませんが、欧米では、こうした品種をヘリテージやエアルームと呼び、<財産、宝物>を意味します。
スーパーに並ぶのは、たいていF1という一代交雑種で、そのタネをまいても同じ実はなりません。そのかわり、生産量や姿形はピカイチで、病気への抵抗性もバッチリ。人間の英知というのはスゴイものですね。おかげで、レストランのサラダバーには一年中トマトが並び、ハンバーガーにちょうど収まる大きさのトマトや、サンドイッチ用の汁がたれないトマト、病気にかからないトマトも登場しました。こうした新しいハイブリッドなトマトがあるのはありがたいことですが、本当に豊かな食生活というのは、おいしいもの、まずいもの、酸っぱいもの、味気ないもの…、いろいろなタイプがあってのことだと思うのです。 家庭菜園では、むしろ、昔ながらの品種のほうがおもしろい。まったく育てたことのないトマト、味わったことのないトマトがあるかぎり、私のトマト育てはエンドレスに続くことでしょう。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。