昨年12月から1年間にわたってお付き合いいただいたこの連載も、今回で最終回を迎えました。まだまだ登場していない野菜たちもたくさんありますが、暦はひとめぐり。バックナンバーで振り出しに戻り、来年春の新たな芽吹きに向かって思いをはせ、計画を練りましょう。


このコラムでも何度かお話ししていますが、環境や季節、天気、雨の量が毎年同じということは決してありません。庭木や草花であれば半永久的な花壇や庭を作ることはできますが、野菜は連作(同じ場所で同じ作物を育てること)を嫌う場合が多いので、翌年は違う場所に植えます。だから、同じ景色の菜園にはならない。鉢植えなら土を変えれば同じレイアウトでできるかもしれませんが、背丈やボリューム、花の数など、同じように育つかどうかは神のみぞ知る……。一年一年、新鮮な気持ちでチャレンジできるのがいいのです。育ててみたい品種や食べてみたい品種もい〜っぱいあるから、毎年、毎日が実験。それが、野菜を育てる魅力のひとつです。
←その造形美に思わず見とれてしまう、「カリフラワー・ロマネスコ」。こんな美しい野菜、キッチンガーデンで育ててみたいと思いませんか?

その昔、たった3鉢の赤いゼラニウムの花鉢から始まった私の園芸生活。一通りいろいろな植物にはまり、行き着いた先が「野菜」でした。薔薇(ばら)でもハーブでも山野草でも盆栽でもなく、野菜。野菜作りは、単に植物を育てる以上のことを私に教えてくれました。
園芸の分類でいうと、1〜2年草、多年草(宿根草)、樹木などがありますが、野菜はというと、半年草(?)と呼びたくなるものが数多くあります。例えば、トマトやなすは、春にタネをまき、花が咲き、その夏には実をつけ、霜が降りて終了。実にエネルギッシュな植物です。そういえば、「おしまいには人間に食べられてしまうものの力強さ、したたかさ」と表現した方がいましたっけ。野菜を育てていると、確実に<生きている>ということを実感できます。あっという間に何センチも大きくなったり、ある日突然花芽をみつけたり、花が終わって実のなる兆しをみつけたり……。

スーパーで買ってくる野菜は今晩のオカズの材料でしかなかったのですが、自分で育てた野菜を前にすると、<命>をいただいているのだなぁ、とつくづく感じます。ご飯を食べる前に「いただきま〜す」というのは、野菜に限りませんが、食材の命をいただきますということ。それを実感できるのも、野菜を作ってみたからこそ。大量にできてしまったときも、たった1個の収穫でも、なんだかとてもいとしくて、「素材を生かして大切にいただかねば!」という気持ちになります。

「畑でどんなふうになっていたかな?」と考えれば、おのずと保存法も分かってきます。そうすると、大根やアスパラを横に寝かせたりしなくなるというわけです。ほかにも、畑から家までの短い距離でもていねいに新聞紙にくるんだり、生け花のように水揚げしてみたり……。思わず過保護になってしまいます(笑)。

この連載の最初の回でも書きましたが、私の場合は、「なりわいにしない野菜作り」です。やればやるほど、同じ<野菜>を作っているのに、農業と家庭菜園では、まったく違うなぁ〜と感じます。スーパーに並んでいるような立派な野菜の収穫を目指すならば、きっちり農業を学んでください。プロのワザや経験にはとてもかないませんから。でも、長さや形が揃(そろ)わないくらい、いいのでは? シロウト力を発揮して、家庭菜園ならではの楽しみに徹しましょう!
もう少しすると、種苗会社から来年のカタログがやってきますが、<プロ用>ではなく、<家庭菜園用>を選んでください。プロつまり生産者のための価値観は、形や色やサイズが揃い、商品価値のあるもの。人間の英知によって、野菜は品種改良が繰り返され、その技術たるやすばらしいものです。病や害虫にも強く、一斉になって作業効率がいい。いわゆるF1という一代交雑種はとても優秀ですが、スーパーで買える品種なら、買ってくればいいのです。
家庭菜園では、ぜひ、固定種や在来種という昔ながらの品種を育ててみることをオススメします。一度にたくさんなるよりも、畑に行くたびに少しずつ、食べる量だけ収穫してくればいいと思いませんか? 多少不格好でも育てにくくても、忘れかけていた本当の風味があって、その個性にハッとさせられます。固定種や在来種を育てると、花が咲いたら実がなり、タネもとれてそのタネがまたまける……。そんな、ごく当たり前のことに気がつくこともできるのです。

また、無理をしないで楽チンな時期(生育適期)に育てれば苦労もあまりなく、自然の太陽や温度や雨が育ててくれます。そうして実がなったときが、本当の旬です。こうしたことに気づいていく喜びや楽しさ、感謝の気持ちが、また来年もタネをまこうという思いにつながるのです。
この繰り返しだから、野菜作りはナカナカやめられません。農薬を使っていないのも自分がいちばんよく分かっていますから、さっとほこりを落とす程度で食べられ、皮も安心していただけます。植物が育つのにはそれなりに時間もかかり、インスタントにはできません。でも、その過程がなにより楽しいのだと、改めて気がつきました。


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