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有名人のお宝カメラ

あの有名人のお宝カメラ Vol.1 水木しげるさん 妖怪の名作を生んだオリンパスL-10スーパー

「ゲゲゲの鬼太郎」「河童の三平」などで知られる漫画家水木しげるさんは、オリンパスL-10スーパーを持ってよく旅行に出かけるという。そうして撮られた資料から多くの名作が生まれた。

――ずいぶん使い込んでますね

水木さんの愛機オリンパスL-10スーパー。グリップ部分がすり減っており、かなり使い込んでいるのがわかる。同機種を使い続け、現在も3台所有しているというように愛着は強い

ニューギニア、アフリカ、南米…どこへ行くにも、首からぶら下げてね。「お、いい構図だな」と思ったら、パッと撮るんです。このカメラたちとの付き合いは長いですね。

――カメラたちですか?

3台持っていて自宅と仕事場、富士山の麓(ふもと)にある別荘にそれぞれ1台ずつ置いてあります。故障したら別の機種を買おうと思っているんです。手入れは一切しないし、落としたりしているんだけど3台とも故障しないですね。もうこれに飼いならされたから、ほかのカメラを持とうという気持ちにならない。このままだと、わたしのほうが先に故障してしまうんじゃないかって思うね。(笑)

――旅行にはコンパクトカメラを携える人が多いですが、L-10スーパーを愛機にしている理由は

わたしは片手でカメラを構えるので、軽すぎるとホールドがしっかりしなくて手ブレするんです。このくらいの重量感があると、どっしりと安定して片手で撮影してもブレない。重くて不便でないと、カメラを持った気がしないですね。

――風景やモニュメントの写真が多いようですね

南欧・地中海に浮かぶマルタ島で撮影された樹木。水滴が目のように光り、気のコブが鼻や口にも見える。まるで妖怪のようだ

構図にひかれてシャッターを切るから、風景や建物の写真が多くなるのでしょう。パッと構えて、パッと1枚撮る。失敗はしない。わたしは絵描きだからね。構図のよさを一瞬で判断する訓練ができているんです。デッサンカというやつですよ。1構図、1シャッター! 一瞬で構図を決められないなんて、かたちに対する生産力の不足です。被写体に向かって、あっちこっちから何回もシャッターを切るようじゃダメですよ。プロでも迷って、何度もシャッターを切りますね。あれはカメラマンじゃなくで、馬鹿めらマンだな(笑)。デッサンカがないんじゃないかね。写真は真剣による斬り合いのように、「一瞬で構図を決めて、迷わずに撮るべし」がわたしの考えですから。

――ワンカットで手応えがあるものなのですか

アフリカ・マリ共和国のトゴン族の家。一見、窓のように見えるのは壁の装飾で、烏を雨宿りさせるためのものだという

手応えじゃなくで、目応え。目で勝負する。わたしの目は鍛えられてますよ。写真は絵を描くより楽ですね。だってシャッターを切るだけなんだから……。写真を芸術だという人がいるけど、デッサン力がない写真でも芸術なのかな。わたしが見る限り、プロの写真でも芸術評価としては74点くらいしかあげられない。

――微妙な点数ですね。では、水木さんご自身の写真は何点ですか

イタリア・フィレンツェのグロッタ庭園の木も、水木さんが撮ると妖怪の顔に見える。撮影は資料収集も兼ねているが、ふつうは目をとめない被写体が多く、やはり不思議な雰囲気の写真に仕上がる

わたしの写真は75点(笑)。デッサンカが優れているからね。だから75点ということは、100点ということなのかもしれない。(笑)

――写真の整理は、すべて自分でされてるそうですね

旅行から帰ると、すぐアルバムに整理しながら写真の裏側に記録を書き込みます。場所とか、撮影したときの感想とかね。ときに妖怪の背景になったりします。

――妖怪が写ったりしませんか

うーむ。ニューギニアでね、部族の酋長がわたしに、「あそこに妖怪の親玉がいるぞ」と指さしてくれた。夕闇の時刻、森の中でした。シャッターを切ったけど、写らなかった。妖怪は、どうも写真には写らんです。(笑)

(更新日:2006年07月19日)

プロフィール

水木 しげる(みずき・しげる)

水木 しげる(みずき・しげる)

1922年鳥取県境港市生まれ。42年に召集、ラバウルで爆撃を受け左腕を失う。復員後、紙芝居画家から貸本作家を経て漫画家に。66年、「テレビくん」で講談社児童まんが賞受賞。以降、「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」「可童の三平」など人気作を発表。世代を超えて、今も多くの読者に読み継がれている。91年、紫綬褒章 を受章。96年、日本漫画家協会賞文部大臣賞受賞。2003年、旭日小綬章を受章、同年3月、境港市に水木しげる記念館開館。

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