−−写真はいつからですか
本格的に撮るようになったのは中学生のころで、農林省勤務だった父の関係でクアラルンプールに2年間滞在したときです。原色の美しい世界に衝撃をうけました。当時の日本は終戦から10年くらいで街はくすんだモノトーンばかり。それが一気に別世界になった。マレーシアはイギリスから独立した直後で、建物や商店の看板なんかもカラフルで洒落ていました。毎日のように父のお下がりのカメラでカラースライドで撮っていました。

−−水中撮影は?
スキューバダイビングを始めた外務省研修生のときからです。藤沢で育ったので素潜りはやっていたのですが、タンクを背負ったとたん、呼吸ができる余裕から「あれも撮りたい、これも撮りたい」と欲が出た。最初に買ったのは、ニコノスIII。当時は、照明用のバルブを詰め込んだ布袋を腰にさげて潜っていました。それからニコノスIV、Vを経てRS。値段は高かったけど、小遣いをはたいて買いました。
1980年、エジプト赴任で紅海の美しさを知ったことでダイビング熱に拍車がかかり、水中写真にのめりこんでいった。音が聞こえないのがいいんです。日々アドレナリンを放出してきついテンションで働いているので、陸上とは百八十度異なる無音の世界に身を置くことで、精神のバランスを保っているのかもしれません。水の中にいると謙虚になれる。ぼくにとっては、終生の救いです。どんなに忙しくても、年2回は国内外の海に潜りに行っています。

−−RSの魅力は?
やはり水中撮影に特化した性能です。被写体もこちらも揺れているし、ダイバーは海中の岩や生物に触れてはいけないという鉄則もある。そんな厳しい条件下で一瞬で被写体を切り取るには、一眼レフという仕様が適している。レンズも水中専用ですから視界が明るく、ピント合わせやフレーミングがしやすい。こんなにいいカメラはもう出ないでしょう。2001年に生産終了のニュースを知ったときはショックでしたね。そしてメンテナンスサービスも06年で終了と聞いて、慌てて予備を買い集めたんです。死ぬときまでに、手元に1台は残っていないと困る(笑)。ダイビングと水中撮影はぼくの最大の楽しみで、そのために働いているようなものだからお金は惜しくなかった。ただ最高峰のカメラを、アマチュアのぼくが5台も買い占めているのはよくないという気持ちもある。RSが手に入らなくて困っているプロの方には、無償でお貸しするつもりです。

−−デジタルへの関心は?
利便性はすごい。枚数制限もないし、すぐに結果が見られて調整できますしね。でも、ぼくはフィルムからは離れられない。デジタルでは微妙な色合いが表現しきれない気がします。そもそも、自然の色を「01」の電気信号に置き換えてしまうことには耐えられないんですよ(笑)。ある映像関係の方が、「デジタルは再現力、アナログは表現力に優れている」とおっしゃった。まさにその通りです。ありのままを写すだけでは、表現にならない。フィルムだからこそ、どうやったら海の世界をきれいに撮れるのか、工夫のしがいがあると思います。ただ、1回に36枚しか撮れないのはきつい。しかもぼくの場合、たいてい37枚目にすごいチャンスがやってくるんだな。(笑)
たくさん撮って、ある程度テクニックが身についてくると、プロとアマの歴然たる差がわかってきますね。尊敬している中村征夫さんの写真展を見て、「がんばれば、自分にも撮れるかな」と思えるような作品は絶無。まあ、「実力の差がはっきり感じられるほど、おれも写真が上達したんだ」と前向きに解釈するようにしています。(笑)

(更新日:2007年04月09日)

岡本行夫(おかもと・ゆきお)
1945年神奈川県生まれ。68年一橋大学経済学部卒業後、外務省入省。ワシントン日本大使館参事官、北米第一課長などを歴任し、91年退官。岡本アソシエイツ設立。内閣官房参与、橋本、小泉内閣で2次にわたり総理大臣補佐官などを務める。国際問題の専門家として、政府関係機関や企業へのアドバイスや執筆、講演、さらにテレビコメンテーターと幅広く活動している。NPO法人「新現役ネット」理事長、立命館大学客員教授でもある。著書に「さらば漂流日本―自力航行への転換」「砂漠の戦争―イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ」、田原総一朗氏と共著で「生きのびよ、日本!! 」など。

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