Time 01
バブルが日本を覆い尽くす
国鉄が分割民営化された1987年、高級車・輸入車などの高価格商品に人気が集中。安田火災(当時)がゴッホの「ひまわり」を53億円で購入。国内最長の青函トンネル、瀬戸大橋が開通、東京ドームが完成するなど、1988年は大型建造物誕生にわいた。1989年、昭和天皇崩御。名古屋・福岡・横浜など15もの地方博が開催。ソニーがコロンビア社を、三菱地所がロックフェラーグループ社を買収するなど、日本が世界を買いあさった。そして、1990年、株が暴落し、バブルが崩壊した。
The Design Scene 01
高級・高価格がマーケットを支配した
企業の独自性やブランドを表現するCI(Corporate Identity)戦略が活発な時代で、1987年に国鉄が分割民営化され、「JR」という新しいロゴが誕生した。バブルの絶頂期を迎えたこのころは、デザインの良しあしよりも、高価格商品に人気が集中。日産の高級車が爆発的に売れ、シーマ現象と呼ばれるブームを引き起こし、トヨタはセルシオで新しい高級車の概念を築いた。日本発のデザイン・コンセプトで、世界市場に新しいマーケットを切りひらくため、1990年にトヨタはエスティマをミニバン市場に投入。同年、金融バブル崩壊で、日本経済は衰退期に入る。

Time 02
夢の後、天災と人災が襲う
湾岸戦争に突入した1991年、証券・金融不祥事が続発。同年には東京都庁が新宿に移転した。地価が17年ぶりに下落した1992年、本田技研はF1からの撤退を決めた。皇太子・雅子様がご結婚された1993年、Jリーグが開幕。スーパーのプライベートブランドやアウトレットに人気が集まった年でもある。1994年、関西国際空港が開港。1995年、M7.2の阪神大震災が発生、東京では地下鉄サリン事件が起きた。同年、野茂が大リーグで新人王を獲得。1996年、加盟197カ国が参加したアトランタ五輪開催。スポーツが明るい話題を提供した。
The Design Scene 02
技術革新が、
新しいスタンダードをつくった
技術革新に伴うシステムの変化は、プロダクトデザインにも新しい挑戦を生み出した。1992年に登場したシャープの「液晶ビューカム」は、ファインダーをのぞくという古典的なカメラ形態を脱却し、デジタル時代のカメラデザインを決めた。1987年に採択された「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」を踏まえ、リデュース・リユース・リサイクルの「3R」をキーワードに、1997年の「地球温暖化防止京都会議」を目指し、環境対策への取り組みが始まる。バブル崩壊後の暗い時代、日本企業は、次の世紀に備えていった。

監修:森山明子・武蔵野美術大学教授
インダストリアル・デザイン(ID)に物語がプラスされ、IDブランドが誕生しました。グッドデザイン賞では、生活に潤いを与えるデザインが登場した一方、デジタル時代を代表する日本デザインが誕生しています。また、住宅が選ばれているのも、人々の生活価値観の変化を表しているのかもしれません。
1987年 ウィンドミディーコントローラー
YAMAHA WX7
ヤマハ株式会社
デザイナー:同社 デザイン研究室
息の強弱、舌の圧力を感知するセンサーを内蔵したコンピュータシステムの入力部分ともいえるデジタル楽器。人間の感性とデジタル領域の調和を目指したデザイン。
1988年 照明器具
あかり
株式会社オゼキ
デザイナー:イサム・ノグチ
岐阜の伝統的な提灯技術を生かしてデザインされた。手漉(す)き和紙と竹の構成が、やわらかな光の空間を演出。「日本のあかり」が生まれた。

1989年 ビデオ付テレビカメラ
SONY HANDYCAM CDD-TR55
ソニー株式会社
デザイナー:同社クリエイティブ本部 デザインセンター
多彩な撮影機能とパスポートサイズという小型化を実現。携帯・操作を容易にし、ビデオカメラのファミリー化、パーソナル化を決めた原型。
1992年 液晶付ビデオカメラ
Hi8 VIEWCAM VL-HL1/
液晶ビューカム
シャープ株式会社
デザイナー:同社 電子機器事業本部 デザインセンター
女性が撮影する姿を研究することから生まれたビデオカメラ。ファインダーを大型液晶にすると再生モニターになった。カメラ部分を回転することで、様々な角度から撮影できた。

1993年 卓上しょうゆびん
キッコーマンしょうゆ 卓上150mlびん
キッコーマン株式会社
デザイナー:GKインダストリアルデザイン研究所
しょうゆの流通改革を目指し、そのまま食卓にのる商品を実現した。1961年の発売以来、日本の生活になじんだロングライフデザインの代表。
1994年 テレビゲーム機
プレイステーション
ソニー株式会社
デザイナー:同社 コーポレートデザインセンター 後藤禎祐
CD-ROMを採用することで、テレビゲームに3DCGを登場させた。左右にグリップを付け、上下左右4つのボタンを配したコントローラーが、ゲーム操作の躍動感を上げた。

1994年 ティッシュパッケージ
スコッティティシュー
株式会社クレシア
デザイナー:松永真
花柄など家庭調のデザインが多かった中、ストライプとロゴだけの主張しないデザインで登場。生活の脇役を「わきまえる」ことで、置く場所を選ばないパッケージを実現した。
1996年 IX240 レンズシャッターカメラ
Canon IXY
キヤノン株式会社
デザイナー:同社 総合デザインセンター 塩谷康
新規格APSフィルムの特性を生かし、2倍ズーム付きでは世界最小サイズ。ボディには、特殊合金ステンレスを採用し、剛性と適度な重量感を持たせたデザイン。

1996年 工業化住宅
GENIUS蔵のある家
ミサワホーム株式会社
デザイナー:同社 商品開発一部
中2階部分に「蔵(納戸)」を配置。大きな収納スペースと3.2メートルの天井高、木部ボリュームの大きなインテリアで、「ゆとりある生活」を実現したデザイン。

森山明子氏プロフィール
武蔵野美術大学教授、グッドデザイン賞審査委員(2002-04年審査副委員長)。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業後、特許庁意匠審査官などを経て、1986年日経マグロウヒル社(現:日経BP社)に入社。「日経デザイン」の創刊に関わり、同誌編集長を経て、1998年より現職。
参考資料『100のデザイン、100の物語』
編集協力:財団法人日本産業デザイン振興会
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